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「あ、お嬢様みっけー」
「はーい、捕まえましたぜお嬢!観念しな!」
「っ山本!須貝!貴方達いつの間に?!」
渡辺との会話に気をとられていたお嬢様。
その背後に迫り来る影に気づかず、彼女は呆気なく一人の執事に抱き上げられた。
お嬢様を抱き上げた方の執事の名は須貝駿貴。
この家で唯一、お嬢様のことを「お嬢」と呼ぶ人物だ。
そんな須貝の背後から顔を覗かせるもう一人の執事の名は、山本祥彰。
小柄でありながら、お嬢様の護衛は大抵彼が担当している。
「俺が呼んだんだよ!観念するのはそっちの方だぜA!」
「伊沢……!貴方まだ諦めて居なかったの?!本当に往生際が悪いわね!!筋肉バカのくせに!」
「バカは余計だバカは!!!」
また始まった、と周囲に居る執事は瞬時に同じことを思う。
伊沢の差し金により呆気なく須貝に捕獲されたお嬢様は、実は今年で十六になる。
……のだが、腕の中でジタバタと暴れるその姿は、ミルクが欲しくて泣きわめく赤子と大差ない。
伊沢に続いて賑やかな食堂に入ってきた福良は、視界の端で揺れる金色に気づき、顔を徐にそちらへ向けた。
そしてその姿を視界に入れると、先程とは別の理由で苦笑を浮かべる。
「……あの、食堂で暴れるのは止めていただけませんか。掃除するの結局俺なんで」
福良の視線の先で淡々と言葉を発する彼の名は、川上拓朗。
役職は執事ではあるのものの、屋敷内で提供される料理の殆どは彼が手掛けているため、大抵は食堂に籠っている。
そうなると勿論、食堂の掃除も彼の管轄であった。
普段から刻まれている眉間のシワが更に深く刻まれ、福良を除いた執事達は一斉に冷や汗を垂らしていく。
だがうちのお嬢様はそんなことじゃあめげない。
皆が川上に気を取られている今がチャンスだと言わんばかりに、お嬢様は須貝の腕からするりと抜け出すと、急いで食堂を飛び出していった。
「まだ足掻く気かああああ!!!!」
食堂内に伊沢のそんな叫び声が響いたことなんて、お嬢様は知る由もなかった。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます!この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです! (2021年3月30日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして(といっても覚えてないと思いますが…)今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか?紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか? (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです!お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます!普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます!ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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