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こういうときはさっさと車に乗れば良いものを、誰にでも平等(という設定)のお嬢様は彼女達に笑顔を振り撒いては、次々に悲鳴が轟く。
一応女子校ではあるのだが、それでこの現状なのだから、完璧すぎる容姿も考えものだ。
「お嬢様。お父様がお待ちしていますので、そろそろ」
「そうね。では皆様、ごきげんよう」
膝を折って華麗なお辞儀を披露したAに、黄色い悲鳴が更に威力を増す。
山本はいつもこの中Aの送迎をしているのか。
……いや、一周回って慣れた説もあるな。
Aが車に乗り込んだのを確認してから扉を閉め、俺も運転席に向かう。
バックミラー越しに彼女の様子を確認すると、Aは窓枠に肘をついてボーッと外を見つめていた。
「疲れた？」
「うん」
学校から帰ってくると、大抵こんな風に気の抜けた返事しか帰ってこない。
校舎では常に気を張って過ごしているからだろう。
一ミリの隙も許されない。というより、許せない、あの空間で。
十六歳にしていろんなものを背負わされすぎじゃないかと、感情の見えない瞳で窓の外を見つめるAを見ていると、よく感じる。
今頃の年齢ならば、もっとはっちゃけたい筈なのに。
例えば、そう。……屋敷の中のように。
「酷い嘘を吐くわよね、貴方も」
「そう感じられたなら申し訳ありません」
「別に良いわ。普通は、両親が揃っていることのほうが多いもの」
あまりにも取り巻きが多かったから咄嗟に吐いた嘘だったのだが、少しチョイスを誤ってしまったかもしれない。
ハンドルを動かしながら、チラリと後部座席の様子を伺う。
すると、窓の外に固定されていた筈の視線が、ゆっくりと俺の瞳を捕らえた。
そこで丁度信号が変わり、ブレーキをゆっくり踏み込む。
「……ねぇ、福良」
「はい」
「お父様達、まだ当分帰ってこられないのかしら」
「そうですね。恐らく、あと一月は難しいかと」
「…………そう」
何度も言うようだが、彼女はまだ十六だ。
人によっては反抗期と言われる時期だが、彼女の場合は小さい頃から殆ど両親とのふれあいが無いのだから、反抗する要素がない。
その代わり、最近のAは人一倍両親の温もりを欲しているように思う。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます！この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです！ (2021年3月30日 17時) (
レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして（といっても覚えてないと思いますが…）今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか？紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか？ (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです！お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます！普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます！ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います！ (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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