道はどこまでも続く (ページ37)

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37話ページ37

｢…｣

｢……｣

｢…えっと????｣

手を伸ばして早10分。私の手元に杖はまだ出てこない
カルパッチョの時は1分足らずで来たはずなのに
全く出てくる気配のない杖に溜息を吐きながら手を下ろす

｢こんなことは今まで1度もなかった…!｣

｢ヴァンデラーって実は魔法使いじゃない？｣

｢そこから疑う？｣

魔法使いだよ。と軽くショックを受けていると哀れみを感じたのか店主が｢コレなら初心者向けですから!｣と優しく渡してきた1本の棒

｢お嬢ちゃん魔法は使えますかな？｣

｢ブブッ｣

｢笑ってるの聞こえてるよ｣

身長が低く顔が見えないこともあって完全に子供だと思っている店主に申し訳なく思いながらも杖を振ってみる
夜空に浮かぶ星の数々と流れゆく光、エーラ流星

｢ﾎｱｯ｣

｢へぇ……こんな魔法もあるんだ｣

｢私の記憶の一部を映し出してるんだよ｣

｢この景色が好きだったの？｣

｢…そうだね、好きだったよ｣

私の弟子が好きだった景色。50年に一度のこの空は一緒に見ることは1回しか無かったけれど
あぁ、懐かしいなぁ…
物思いに耽っていれば映し出した空の一部に亀裂が入りガラスが割れるかのように魔法が壊れた。手元を見れば粉々になった杖

｢魔力に耐えられなかったみたいだね｣

｢杖が魔力で割れるの初めて見た｣

弁償すると店主に言ったものの綺麗な景色を見せてくれたお礼と言わんばかりに断られ結局どちらも杖を買うことなく店を後にした
というか

｢なんで今更杖買おうとしたの？
珍しい杖の持ち主だったのに｣

｢…壊れたんだよ｣

彼の言葉にそういえばそうだったな…と思い出す
杖を直すのは杖を作ることを生業とする人間でも難しい、それが最古の十三杖ならより一層

｢早く言ってくれれば良かったのに｣

｢何を？｣

｢壊れた杖は捨ててないよね？｣

｢捨ててない。寮にあるけど｣

｢なら私に1度渡してくれない？｣

｢直せるの？｣

｢まぁ、多分いける｣

曖昧だな…と不安そうな声を漏らしていたが縋るものが私しかいない事を思い出したのかゆっくりと頷いた

後日完璧に直した杖を見てカルパッチョはヴァンデラーの有能さに若干の不服を感じていたのだった…

｢出来ないこととかないの？｣

｢君達の何倍も生きてるからねぇ…ちょっとやそっとの不可能はないね
でも……あ｣

｢何？｣

｢料理は得意じゃないかも｣

｢…へぇ｣

｢うわ、絶対私が嫌なこと思いついてる｣