3話 ページ3
｢お待たせしました｣
｢A、紗代はどうしたのです
一緒ではなかったのですか｣
大広間に入って早々質問をなげかけてきたのは現在の母親である龍賀乙米、隣に座る私を目玉だけ動かして見るその不気味さに少し笑いが漏れる
｢お爺様が亡くなって悲しいのでしょう
気分転換に外に出しました。もう少ししたら帰ってくると思いますよ｣
｢貴方、また勝手なことを…!｣
｢法事の時に泣かれても困るでしょう｣
ニコリと母の方を見て微笑めば深いため息を吐かれた
紗代が帰ってくるのを静寂の中で待っていると奥の廊下から何やら話し声が聞こえてきた
耳をすませてみれば父である克典の経営する会社の者が来たのだとか
こんなこともしなくちゃいけないのか、サラリーマンは大変だな
｢見慣れない顔がいるようだけども｣
｢私は血液銀行の水木と言います
この度はご心中お察しします｣
｢貴方に分かるというのですか、お父様を亡くしたこの私の気持ちが!｣
｢ハハッ｣
深く頭を下げる彼に無言の圧をかける母
彼は頭を下げつつチラチラと何かを確認するように目線を動かしていた
ここまで来るなら家系図くらいは理解しているか。と1人で納得していれば紗代と従兄弟の時弥が室内に入ってくる
｢あ、おじさん!｣
｢あらぁ？もうお知り合い？やるじゃない｣
｢道案内したの？｣
｢そんなところです｣
丙江おばさんの話は無視し、私の問いには曖昧ながらも答える紗代
おばさんは少し顔を歪めたがまぁ、気にするまでもないだろうと目線を前に戻した
｢皆揃うたか｣
｢時麿兄さん｣
この会話に少しだけ水木という男が反応した
時麿おじさんが部屋に入ってくるとその異様な雰囲気に押されたのか唖然とする彼
時麿も座ったのを確認して克典は遺言書を読むように伝えた
内容を簡単にまとめれば
龍賀一族の跡取りは時麿、だが長田家の長男時弥を養子とし彼が成人すれば時弥を当主とする
社長は克典のままだが、会長を乙米とし全ての決定権は乙米にあるもの
分家のことも書かれておらず一同が唖然とする中最初に動いたのは克典だった
｢待ってくれ、私は会社のためにこの身を捧げてきたのに!
お義父さまは私に当主を譲るとまで仰ってくれたんだぞ!!
寄越せ!ソレは偽物だ!!!!｣
克典が走り出したのを合図かのように分家の者も遺言が書かれた紙を奪うべく乱闘騒ぎに発展する
皆が立ち上がって壁際に避難する中、私は1人座ったままその光景を見ていた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 359人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あべの(プロフ) - そして、この後の囲われた日常が気になるのは自分だけなんでしょうか？ (12月25日 15時) (
レス) @page25 id: 55582985e0 (このIDを非表示/違反報告)
あべの(プロフ) - 1から3まで並べると尊くて泣きます。 (12月25日 15時) (レス) @page25 id: 55582985e0 (このIDを非表示/違反報告)
箔月(プロフ) - えー、全て神でした (12月25日 11時) (レス) @page25 id: 26079ce184 (このIDを非表示/違反報告)
rune16(プロフ) - 第一特典はと合わせたい神絵でした。遅くなりましたが、コメント失礼しますwww私は第一特典もらってないので是非とも並べたい。いや、並べないといけない第三特典だったとお伝えします！ (12月25日 11時) (レス) @page25 id: c9d7379dbf (このIDを非表示/違反報告)
Rin'lan - 天才すぎます!! (12月23日 21時) (レス) @page19 id: 3767ef094f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水菜目
| 作成日時：2023年12月11日 2時
