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『す、水槽持ってきたっ...!』


【お、きたきたー】


Aは水槽を抱えて教室に飛び込み、水を入れる。


(おつかれサマ!ありがとねー)


『どういたしまして。寧々ちゃんは…』


花子さんがいることは確認できたが寧々がいないことに疑問を持つ。

とりあえずAが水を入れ終わった水槽を持つと、花子さんがそこに魚を放り込んだ。


『魚?』


(んーん。これヤシロ)


『........ええ?!?!』


(あとちょっとで干からびるとこだったよ)


なんでもないことのように花子さんは言うが
Aにはどうしてこんなことになったのかさっぱり分からない。

戸惑うAをよそに、花子さんは水槽の中に手際良く海藻やら、家やらを設置し始めた。


(どう?俺センスあるでしょ?)


【息ができる...A?花子さん?】


『寧々...ちゃん?』


くぐもったような寧々の声が水槽から聞こえる。

さっきまでぐったりとしていた寧々らしい魚は、いつの間に元気を取り戻していた。


【ヤシロのために色々用意したんだぜー。気に入ってもらえるとうれしーな】


【これなに...?私どうなっちゃったの?】



そう問いかけた寧々の為に花子さんは水槽を持って鏡の前に移動する。

じゃじゃーん、と花子さんが言うのと同時に今の自分の姿に寧々は目を丸くして驚いた。


【魚類?!】


【喜んでる喜んでる】


【違う!】


『寧々ちゃーん...なんでお魚に...』


Aが屈んで水槽を覗き込み、涙目で言うと寧々も泣きそうな顔になる。


(ヤシロは人魚の呪いを受けたんだよ。魚は人魚の眷属だからね)

(もし誰かに飲ませていれば呪いは薄まるからカンペキにお魚にはならなかった)


多少魚っぽくはなるけど、という花子さんのメモに寧々とAは顔を顰めた。


(人魚の鱗は口にした者に呪いを授けるだけのもの。ただ同じ呪いを受けた者同士は特別な縁で縛られるから縁結びだなんて言われてる)


花子さんは残された鱗を取り出す。


(使わなかったんだね。なんで?)


【...私は先輩のこと好きでもなんでもない。ただ利用しようとしてるだけって気付いたから】

【両想いになれるなら誰でも良かったの】


【最低...】


静かに、ぽつぽつと言葉を紡いでいるうちに寧々の目からは涙が零れ落ちる。

Aは、それに気付いていて止めなかった自分が悔しかった。


その刹那、地面が激しく揺れ始めた。

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ミク(プロフ) - お気に入り登録しました、がんばってください (2020年5月23日 14時) (レス) id: 1e828f9e08 (このIDを非表示/違反報告)
はの(プロフ) - フレアさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにしてくださっていること、とても嬉しいです!今後の展開も見守って頂けたらと思います。更新無理せず頑張りますね。 (2019年3月29日 0時) (レス) id: f5fc6d41da (このIDを非表示/違反報告)
フレア(プロフ) - いつも更新楽しみにしています。今後もはのさんのペースを守って無理せず頑張って下さい!これからも応援してます! (2019年3月28日 23時) (レス) id: ed111eeb0b (このIDを非表示/違反報告)
はの(プロフ) - リンさん» コメントありがとうございます!頑張りますね。今後もよろしくお願いします! (2019年3月28日 23時) (レス) id: f5fc6d41da (このIDを非表示/違反報告)
リン - 更新楽しみにしています! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 6c09da8abb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はの | 作成日時:2019年3月18日 16時

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