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ムカシのはなし ページ1

ちょっとだけむかしのお話。


旧校舎の三階、女子トイレの三番目。

誰も訪れないその場所に一人の少女が立ち止まった。


少女は震える手で三回、トイレのドアを叩く。

静まり返った空間にコンコンコン、と冷たく硬い音が響き渡った。


『は、花子さん花子さん...いらっしゃい、ますか』


少女は胸の前でぎゅっと両手を握りしめ、嗚咽交じりの小さな声で言った。


依然としてトイレは静まり返ったままだ。

しばらくじっと待っていた少女は、諦めたように胸の前の手を力なく下げた。


『......なぁんだ。花子さんなんてやっぱりいな』


【はーあーい】


『えっ?』


キィ、と甲高い音を立ててゆっくりトイレの扉が開く。
少女は思わず後退りをする。



【俺が、学園七不思議が七番目『トイレの花子さん』はじめまして?】


トイレのタンクに座り込んだ少年はそう言ってにっこり笑った。

よっ、と地面に着地し、声を出せない少女の顔を覗き込む。


下を向く少女の右頬には誰かに殴られた跡があり、その目には大粒の涙が溢れていた。


【...ね、俺の事知ってて来たんでしょ?君の願い事聞かせてよ】


『......わたし、ひとりぼっちなの』


ぽつりと少女が言葉を紡ぐ。
そのまま何かを言いかけて、唇をぐっと噛み締めた。


『花子さん。お願いを聞いてください』


『誰でも、誰でもいいから…わたしと、一緒にいて欲しい......』


少女の堪えていた涙が溢れ出す。

悲痛な願いを聞いて、少年はゆっくり口を開いた。


【うん、分かった。君の名前は?】


『墨染...A』


【Aね。契約成立だ】


少年は少女の手を引っ張り、こぼれ落ちた涙を拭う。

驚いて顔を上げた少女の目の前でにっ、と笑った。



【Aのために、俺がずっと一緒にいてあげる!】




少女はこの日、怪異の少年と契約を交わした。

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ミク(プロフ) - お気に入り登録しました、がんばってください (2020年5月23日 14時) (レス) id: 1e828f9e08 (このIDを非表示/違反報告)
はの(プロフ) - フレアさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにしてくださっていること、とても嬉しいです!今後の展開も見守って頂けたらと思います。更新無理せず頑張りますね。 (2019年3月29日 0時) (レス) id: f5fc6d41da (このIDを非表示/違反報告)
フレア(プロフ) - いつも更新楽しみにしています。今後もはのさんのペースを守って無理せず頑張って下さい!これからも応援してます! (2019年3月28日 23時) (レス) id: ed111eeb0b (このIDを非表示/違反報告)
はの(プロフ) - リンさん» コメントありがとうございます!頑張りますね。今後もよろしくお願いします! (2019年3月28日 23時) (レス) id: f5fc6d41da (このIDを非表示/違反報告)
リン - 更新楽しみにしています! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 6c09da8abb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はの | 作成日時:2019年3月18日 16時

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