ワレモノ注意 ニ ページ28
『作り直しなさい。材料が少なくなってしまいましたが、限られた食材でその場にあったいいものを作ること』
『分かりました』
オババに厳しい指示を出されるが、Aはにっこりと微笑んで返事をした。
しばらくしてできあがったのは、派手すぎず質素すぎないちょうどいい塩梅のもので、相変わらずどれも美味しそうである。
『っ……りょ、料理は見た目だけではありません。味が肝心です』
オババはそう言い箸をつけて料理を口に運ぶ。
瞬間、目を見開いた。
『お……美味しいッ!!』
内心悔しいと思いながらも箸は止まらず、ただ黙々とご飯を食べていた。
すぐに完食してオババは箸を置く。
(何をやらせてもすぐに期待を上回って見せてくる……)
『……完璧ですね。悔しいですが、あの限られた食材でこれほどのものを作るとは、何も指摘する点はありませんよ』
『本当ですかっ!ありがとうございます!』
当たり前と思い、したたかに礼を言うのではなく本当に嬉しそうに無邪気に笑う彼女を見て、オババはフッと笑った。
(これは輿矩様たち皆が目をかけるのも無理ないですね)
当初はAに対してオババは自分の立場を脅かす存在となる、と思っていたがそれとはまた別枠だと判断した。
しかし現在、お妙と対峙して彼女は焦っていた。
(A殿とはまた違った強さ。相手を牽制する圧力と肝……末恐ろしい。このままこの小娘が柳生家に嫁げば間違いなくオババを脅かす脅威となろうぞ)
オババは輿矩の命でお妙をイビリ倒して追い出すように言われていた。
花嫁修行という名目でお妙を隔離し、九兵衛を近づけさせないつもりだったのである。
(輿矩様……これは一筋縄ではいきませぬぞ。何としてもこの娘をこの屋敷から追い出さねば。柳生家が滅びる)
「もうよいです。貴方にはホトホト呆れました……そこのゴミ、片しておきなさい」
お滝は机をひっくり返して外に散らばった料理を見る。
「捨ててはいけませんよ。コレは全て柳生家一流の食材で作られしもの。責任をもって貴方が食べなされ。犬のエサが貴方にはお似合いですよ」
「おじい様、犬のエサらしいですよ」
お滝の想定に反して、庭に落ちた黒焦げの料理を敏木斎が食べていた。
「敏木斎様ァァァ!!何食ってんですかアンタァ!」
「もったいねーよコレ。まだ食えるぜ」
「食える食えないじゃなくて柳生家の頂点が何やってんのォ!」
黒い塊を食う敏木斎にお滝がツッコんでいた。
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刹那*桜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!! (2022年12月27日 20時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメ失礼します!! めっちゃ面白いです!! これからも頑張ってください! (2022年12月26日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - あたりんさん» ありがとうございます!! (2022年11月20日 0時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年11月14日 16時) (レス) id: c0f0373936 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - 花香さん» コメントありがとうございます!9個もあって長いですなか一気に読んでいただきありがとうございます!!わりと読みづらい所もあるかと思いますが好みと言ってもらえてとても嬉しいです!!(;ω;) (2022年11月7日 23時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年11月7日 0時