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「えっ、あの、アイスを買いに」
「こんな時間にか」
「うん。ちょっとそこのコンビニまでだし」
歩いて五分もしない距離だ。
すると、ヒスンは眉間に皺を寄せたかと思うと
歩き出す。
マンションとは別の方向へ。
帰ってきたんじゃなかったのか。
不思議そうに見ていると、
ヒスンは振り返って。
「どうした、行かないのか？」
「えっ、ヒスン様もコンビニに用事？」
「違う。こんな時間に女一人は危ないだろ」
驚いて、困惑した。
「えっと、ついてきてくれるの？」
「早く来い」
「う、うん」
急いでヒスンの元に行き、
歩く彼の横に並んだ。
並んで歩くというのはなんだか変な感じ。
ヒスンはスーツを着ていて
いつもの制服姿よりも大人っぽく見える。
パーティーで女性達が肉食獣のような目で
見てしまう気持ちも分かる気がするな。
お互い何も話すことなくコンビニ着いた。
カゴを持つとアイスのコーナーに直行して
気になるアイスをこれもあれもと入れていく。
ついでに兄のもと手を伸ばすと
隣から呆れた声が。
「そんなに食うのか？」
「お兄ちゃんのもだから」
「それにしたって…」
多すぎるだろ、と言いたそうだ。
「お風呂上がりは食べたくなるんだもん」
無視してアイスをカゴに入れると
ヒスンが近付いてきて私の髪に鼻を寄せる。
固まる私には構わず、彼は匂いを嗅ぐと
「風呂上がりか」
などと呟いて、一人納得している。
シャンプーの匂いでも感じたのだろうか。
そう思うと、カッと頬が紅くなる。
口をパクパクさせて何かを言おうとして
言葉が出てこない。
ヒスンの態度が変わらないから
もはや気にしている自分の方が
おかしいような気がしてくる。
さっさとレジに向かったヒスンの後について行き
店員にカゴを渡して
財布を取り出そうともぞもぞしている内に
ヒスンがカードを店員に渡してしまっていた。
「えっ、いいよ私のアイスだし」
そんな私の言葉など無視して
ヒスンはお金を払ってしまった。
「ほら」
そう言ってアイスの入った袋を渡され
さっさとコンビニから出て行ってしまう。
私は慌てて後を追う。
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作者名：yori | 作成日時：2022年4月12日 0時
