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「イ財閥以前に、ヒスン様は素敵だから
女の子なら誰でも惹かれると思うよ。
皆ヒスン様の恋人になりたくて必死なのね」
イ財閥というブランドがなくても
きっと彼の恋人になりたい人は沢山いるだろう。
モテる男は大変だなと思いながら
ハムと卵のサンドイッチを取り、
ぱくりと食べる。
すると、横から伸びてきた手のひらが
ふいに自分の頬に添えられて。
驚きながら横を向くと、
ヒスンの全てを絡め取るような
漆黒の眼差しと重なった。
「お前は？」
「えっ……」
「お前も俺に惹かれるか？」
その問いにすぐには答えられず
……いや、
なんと答えたら良いのか分からなくて
自分を見つめるヒスンの瞳を見つめ返す。
冗談で返せばいい。
けれど、その瞳があまりにも真剣で
笑って返すことができなかった。
沈黙がその場に落ちる。
その時、手に持っていたサンドイッチの具が、
ぽとりとスカートの上に落ちたことで我に返った。
「わっ、きゃ」
大きく仰け反ったことで、
頬に添えられていた手はするりと離れる。
そのことに少し寂しさと
安堵がない交ぜになる。
「ティッシュ、ティッシュ」
バッグからティッシュを取り出し、
汚れたスカートを拭く。
すぐに拭いたが、
少し汚れが残ってしまった。
きっと今、自分の顔は情けないまでに
赤いだろう。
拭いているふりをして、
それを悟られないように
髪で顔を隠しながら俯いた。
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作者名：yori | 作成日時：2022年4月12日 0時
