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「えー、違うよAちゃん。
ハナさんはヒスン様の彼女じゃないって」
「そうなの？
だって彼女には呼び捨てで
名前呼ばせてるから、てっきり…」
女子生徒の全員がヒスン様と彼を呼ぶ中で、
唯一呼び捨てで呼ぶことを容認しているのだから
それだけハナはヒスンの特別な人なのだろうと
思っていたけどソアによると違うようだ。
「だって、Aちゃん
彼女と話してるヒスン様が
笑ってるの見たことある？」
「……ないかも」
ハナとヒスンが話している姿を
思い返してみてそう答えた。
「でしょ、普通彼女相手なら笑うでしょう。
でも、話している場面はよく見るけど、
ハナが一方的に話してるだけだし、
ヒスン様が彼女を相手してるの見たことない。
あれで彼女なんて、ないない」
確かにソアの言う通り、
ヒスンが笑った所は
見たことがなかった。
恋人と話していれば
もう少し表情が緩むはず。
けれど、ハナがヒスンに話し掛けていても
表情一つ変えないどころか、
視線すら向けないのだから
恋人同士と言うには
無理があるのかもしれない。
「でも、ヒスン様はハナさんのこと
なんとも思ってないとしても、
彼女の方は違うよね、あれ」
ハナがヒスンを見る目には
明らかな好意が見て取れた。
あれでは誰が見ても
ハナがヒスンを好きなことが分かる。
「うん、間違いない。
あれは絶対にヒスン様のこと好きだよね。
ま、相手にされてないみたいだけど」
「私に対してもそうだけど、
あれだけ無視されてて
話し掛け続けられるのって凄い精神力だよね…
私なら落ち込むと思うんだけど」
それとなく発せられる空気で、
迷惑であることを悟ってもらおうと
会話を切り上げようとしたり
つまらなさそうな顔をしたり
あれこれしているがまったく効かない。
返事のないヒスンに対しても、
一方的に話せるあの精神力は
凄いと普通に感心してしまう。
普通なら途中で心が折れる。
「一種の才能だよねぇ、
その被害がこっちに来るってのが厄介だけど」
「激しく同感…」
このまま彼女が気が付かないのなら、
泣かれるのを覚悟ではっきりと
拒否した方が良いかもしれない。
全ては平穏な生活を送るために。
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作者名：yori | 作成日時：2022年4月12日 0時
