テリトリー ページ1
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「今日はよろしくお願いします!!」
「はあい。よろしくねえ」
周りの同級生達は嬉しそうに笑顔で挨拶している中、
「Aちゃん、浮かねえ顔してんな」
「当たり前でしょ…てかそれはコナン君も一緒じゃない」
「あらあら、お二人さん。挨拶もなしでそんな顔するなんて
梓さん達に失礼じゃない」
哀に突っ込まれつつも、コナンと二人で嫌な顔。
社会科見学の日が近づくにつれ憂鬱になっていたが、ついにその当日は訪れてしまったわけで。
帝丹小学校の校区のお店を回っていくという中で選ばれた飲食店が、例の店。
そして、
『へえ。社会科見学。いつなんだい』
『…やだ。言わない』
「本日はよろしくお願いしますね、帝丹小学校の皆さん」
彼は爽やかな笑顔で現れた。
別にAが言わなかったところで、梓やマスターが話しているだけだ。
状況は変わるはずもなかっただろうが、自分から誘うのは嫌だった。
それも、小学一年生としての風見Aの姿でいるのを見られるのが恥ずかしかった。
「まず、お客さんが来たら」
普段、コナン達を相手しているだけあって梓の説明は上手だ。
ちらちらとAを見ながら話しているのは気に入らないが、子ども達が興味深そうに聞いているのを見、彼女のことを尊敬していた。
梓が一度キッチンに引っ込むと、次は安室が出てくる。
彼はキッチンからコーヒーメーカーを出してきて、どうやってコーヒーを淹れて居るのか話し始めた。
豆を挽く工程で、
「じゃあ、君やってみようか」
歩美に手招きして体験させて見せる。
時々交代して、一気に子供の興味を引いて見せた。
(さすがですことー)
半ば馬鹿にしつつも、薄っすらと感じる珈琲の香りに少しだけ身を乗り出していて。
「じゃあ、次は…君」
むかつくくらいに眩しい笑みをAに向け、手招きした。
コナンや哀からの憐れむような視線を感じながら前に出る。
「じゃあ、今からドリップするから皆注目」
Aの手を包むようにして安室の手が重なる。
湯をゆっくりと注げば、
「うわあ!すっげえ!」 「もこもこだー!」
粉が風船のように膨らみ、良い香りが鼻をくすぐる。
思わずその香りに酔いしれていると、
「…今度また一緒に淹れよう」
そう耳打ちして、安室は悪戯っぽく笑った。
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Nattu(プロフ) - かるぴんさん» わわー!いっぱい書いてくれてる!嬉しいですありがとうございます;;同じ目でとかそんな…恐れ多い;;一生なんていただきとても嬉しいです!//嬉しい言葉ばかりでにこにこしてます笑コメントいただきありがとうございます!暖かく見守っていただけたらと思います^^* (7月5日 23時) (レス) id: 37a11942bb (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - >アニメやイラストで安室さんを見てもこの小説を読む前と同じ目では見れません‼︎番外編もとても素敵です。一生忘れられないお話をありがとうございます。 (7月5日 2時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - どんどん展開に引き込まれて読む手が止まりませんでした!1コメ目なんて光栄です!Nattuさんの安室さんが本当に素敵で彼の魅力を再確認できました。 (7月5日 2時) (レス) @page12 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年5月2日 0時