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身体が燃えるように熱い。
酒を飲み過ぎた時のように、心臓がばくばくと音を立て呼吸が浅くなる。
「行ってらっしゃい」
そう言い、安室が出ていったことを確認してその薬を口に含んだ。
最初は何ともない、そう甘んじていたが急にその副作用は現れた。
その痛さと感覚に翻弄され、気を失えば、
「…身体が、重い」
小さかったはずの掌はかつて見た成人女性の掌。
鏡を見れば、携帯電話に挟んでいた写真に写った女がそこに立っていた。
「本当に、効くんだ」
まじまじと鏡に映った自分を見ながら、顔に触れる。
久しぶりの自分の身体の感覚にむず痒い感覚に陥る。
(この姿で外に行ってみたい)
そんな軽い気持ちが湧いて、安室の服を手に取る。
少しだけ大きいサイズのそれを折り曲げながら着、バッグに子供用の服を詰める。
「行ってきます」
誰もいない部屋に話しかけ、外に出る。
外はまだ明るく、子ども達が楽しそうに走り回っていた。
(あ…コナン君達だ)
また、心臓の音が早くなる。
自然と汗が流れていく。
「コナン、あの公園サッカー禁止らしいぜ」
「まじかよ。また、別の場所探さねえと」
「そういえば他の公園もサッカーできなくなってましたよう」
通り過ぎながらも、彼らは全くAに気づかず公園へと走っていった。
ほっと胸を撫で下ろしていると、目の前にまたも知り合いが視界に入る。
白黒の緊急車両の中には、ついこないだ我儘を聞いてくれたカップル二人。
特にそのうちの彼女は勘が鋭く観察力もある。
また、汗が落ちるのを感じながらその車を横切るも、
「高木君、次の現場に向かうわよ」
「了解しました」
二人は気づかず、ランプを光らせて過ぎ去っていく。
(どきどきしてるのは、私だけだ)
そう安心し、街をひとしきり一周する。
子供の姿の時とは違い、高くなった視点で辺りを見回せば知っているはずの街も知らないもののように見えた。
「ただいま」
そう言い、家に戻る。
愛犬は姿が違えど匂いで分かるのだろうか、最初は疑っていたものの足に顔を擦り付けている。
そんな姿に癒されていると、
「…君は誰だ」
居間の方から居ないはずの彼の姿が見えて、思わず手にある鞄を落としていた。
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Nattu(プロフ) - 慎さん» すみません今気づきました〜;;遅れてすみません;;作品違うのに遊びに来てくれて嬉しいですいつもありがとうございます!好きな作品被りで嬉しいです〜! (2023年1月11日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - Nattuさん〜!新作投稿ありがとうございます😊まさかの供給に少し驚きました。コナンの世界は私も好きなので今から凄く楽しみです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨今作品も変わらず、応援しております´ω`* (2023年1月2日 22時) (レス) @page3 id: a9894f14eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年1月2日 22時