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あっけなく旅は終わりを迎え、もうテントを片付けていた。
(もう、明日から学校か)
肌を撫でる風がどこか冷たく感じる。
未だわいわいと騒ぎながら片付けている彼らを見ながら、ノスタルジーに浸る。
ふと、彼ら全員で車に向かい、その場には誰もいなくなっていて、
(…あ)
目の前にはリュックが自分のものを含め六つ。
その中には、手に入れたいそれが入ったリュック。
(今ならいける)
そう、悪魔の声が囁いた。
辺りを見回し、瞬時にそのリュックに手を伸ばし中を探る。
そして、目的のものが入ったケースを手に取った。
喉が鳴る。
どくどくと鼓動が早くなっていく。
恐る恐るケースを開け、震える指先で怪しい赤と白のそれを摘まむ。
急いで胸ポケットを仕舞い、慌ててリュックをまとめて持つ。
「Aちゃん、持ってきてくれてありがとー!」
「重いだろ!俺が持つぜ!」
「あ…ありがとう」
純粋な好意で手を差し伸べてくれる彼らに胸が痛くなる。
ポケットに入ったそれを意識すると、ますます罪悪感が増していく。
だが、ここで返すわけにもいかない。
もし、持っていることがばれてしまえば、何故その薬だけを狙ったのか、そうコナンや哀に追及されるだろう。
そして、Aの存在をさらに言及されるに違いない。
「忘れ物はないかあ?」
「ないよー!」
「ばっちりです!」
「よし。じゃあ帰るとするかのう」
子ども達は元気よく車に乗り込み、すぐに夢の世界へと吸い込まれていった。
コナンも哀も眠ってしまっていて、Aはただただ車窓を眺めているだけで。
(眠れない)
犯罪者はこのような感情で毎日過ごしているのだろうか。
冴えきった目で外を見るも何も入ってこず、どうしようかとぐるぐると頭の中で考えが巡る。
「A君は寝なくて大丈夫なのかい」
「…う、うん。なんかキャンプが終わると思うと寂しくて」
「確かにのう。わしも楽しかったわい」
そうにこにこと笑う博士にまたちくりと胸が痛む。
(…週末。週末、ちょっと試すだけだから)
そう言い訳をして、眠る哀に目配せして小さく頭を下げた。
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Nattu(プロフ) - 慎さん» すみません今気づきました〜;;遅れてすみません;;作品違うのに遊びに来てくれて嬉しいですいつもありがとうございます!好きな作品被りで嬉しいです〜! (2023年1月11日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - Nattuさん〜!新作投稿ありがとうございます😊まさかの供給に少し驚きました。コナンの世界は私も好きなので今から凄く楽しみです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨今作品も変わらず、応援しております´ω`* (2023年1月2日 22時) (レス) @page3 id: a9894f14eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年1月2日 22時