24 ページ24
.
いつもと同じように俎板の前に立ち、野菜を切っていく。
「へえ。貴方、料理が上手なのね」
「…まあ。人並程度だよ」
そう感心する声を上げた哀も慣れた手つきで料理を進めていく。
視線の先では少年達が楽しそうにテントを組み立てている。
「哀ちゃん…Aちゃん…」
ふと弱弱しい声で振り向けば、眠そうな顔で歩いてくる歩美が見えた。
「まだ休んでていいのよ。さっきまで具合悪かったんだから」
「んーん。もう大丈夫だから」
小学生ながらに彼女は責任感が強いのだろう。
Aが止めようとするより前にもう手を洗っていた。
少女が集まってする話といえば一つ。
「Aちゃんは好きな人とかいないの？」
その一言に懐かしいと胸が熱くなる。
純粋なきらきらとした瞳が眩しい。
「う、うーん…私はまだ転校してきたばっかりだし、好きな人とかは」
そう誤魔化しながらも、心臓はばくばくと音を立てている。
それを知ってか否か、
「あら。貴方はあのポアロ店員かと思っていたのだけど」
哀は楽しそうにそう言う。
背中がさあっと冷えていくのを感じる。
「あっ安室さん？そっかーイケメンさんだもんね！」
「ちょちょちょ、待って。私小学生だし、そ、そういう年上…すぎるのは好みじゃないというか」
「そうなの？Aちゃん、大人っぽいし、歩美お似合いだと思うけどなあ」
「今時年の差カップルなんて普通らしいわよ？」
「年の差にも程があるって…」
いつの間にか会話に華が咲く。
あまり触れられたくない話題ではあったものの、楽しんでいる自分がいる。
動揺して、思わず指を切ってしまいそうだ。
そんな時だ。
「ごめん、ちょっと電話」
震える携帯を取りながらその場を離れる。
画面を見て、思わず顔が歪み、
「…どうしたんですか」
「不機嫌なようだな。何か都合が悪かったかな」
「いえ。別に。で、用件は」
「いや、特には。楽しんでいるかなと思って」
呑気に様子を尋ねてきた安室に強く当たる。
「ええ。すっっごく楽しいです！」
そう口を尖らせて言えば、
「邪魔したようで悪かったね」
と画面の向こうでにやにやと笑う男の姿が頭に浮かんだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nattu(プロフ) - 慎さん» すみません今気づきました〜;;遅れてすみません;;作品違うのに遊びに来てくれて嬉しいですいつもありがとうございます！好きな作品被りで嬉しいです〜！ (2023年1月11日 16時) (
レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - Nattuさん〜！新作投稿ありがとうございます😊まさかの供給に少し驚きました。コナンの世界は私も好きなので今から凄く楽しみです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨今作品も変わらず、応援しております´ω`* (2023年1月2日 22時) (レス) @page3 id: a9894f14eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Nattu | 作成日時：2023年1月2日 22時
