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「マスターから電話だ!ちょっと出てきます」
人混みを避け、申し訳なさそうに梓は席を立った。
目の前のAはもぐもぐと口を動かすだけで、話す素振りもない。
(さて。どう対応していくべきか)
見えない壁を感じ躊躇してしまう。
そう少し遠慮していると、
「美味しいですね、これ」
Aは安室の顔を見ながら話しかけてきた。
「そうか。なら良かった」
「あまり透君の作るご飯食べることがないから新鮮です」
「いつも君に任せきりになっているからね。
気に入ってくれたのならいつでも作るよ」
互いに当たり障りのない言葉を吐き、様子を伺う。
周りの子供たちは嬉しそうに競技のことや友人のことを家族と話している。
それとは打って変わり、こちらの空気は少し重く暗い。
そんな対比が自分達の距離感を表しているようで、寂しく感じてしまう。
その空気を察したのか、
「じゃあ…
今度、この唐揚げ、また作ってほしいです」
彼女はそうはにかみながら言った。
確かに弁当箱の端の唐揚げがあったであろうスペースは、すっかり空っぽになっている。
様子を見るに、遠慮して言っているわけでもなさそうだ。
(なんだ、僕の考えすぎか)
AはAなりに寄り添おうとしてくれていることに安堵を覚える。
ここで、
『君がそう言うなんて珍しいな』
なんて茶化してしまえば、すぐに不機嫌になってしまうような気がして、
「じゃあ、明日は僕が夕食をご馳走しよう。
明日はいつもより帰りが早い予定なんだ」
と冗談を言うのを堪え、にこりと笑いかける。
Aは嬉しそうに笑っておにぎりを口に含んだ。
それに釣られるようにして、安室も手に取り口に入れる。
「君のおかげで貴重な経験をさせて貰えるな」
「それは…親代わりとして?」
その尋ねに、
「さあ、どうだか」
とそうだとも言わずに濁したのは、親以外の感情があると何となく気づいていた。
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Nattu(プロフ) - 慎さん» すみません今気づきました〜;;遅れてすみません;;作品違うのに遊びに来てくれて嬉しいですいつもありがとうございます!好きな作品被りで嬉しいです〜! (2023年1月11日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - Nattuさん〜!新作投稿ありがとうございます😊まさかの供給に少し驚きました。コナンの世界は私も好きなので今から凄く楽しみです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨今作品も変わらず、応援しております´ω`* (2023年1月2日 22時) (レス) @page3 id: a9894f14eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年1月2日 22時