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人が全くおらず、街燈の灯が道を照らす。
(すっかり遅くなってしまったな)
扉をゆっくりと開けながら中に入る。
「ただいま」
小声でそう呟くも返事はない。
静かに愛犬だけが足元に擦り着いてきた。
(珍しいな。明日は休日なのに)
先に寝てて良いと言っても、Aは休日には起きて待ってくれていた。
テレビや読書。
そんな時間潰しをしながら、居間から顔を覗かせていた。
今日はそのような迎い入れもなく、居間のカーテンがゆらゆらと揺れている。
そして、少しの話し声。
おそるおそる近づいて耳を澄ましてみれば、
「ああ…うん。そっちが大丈夫そうならよかったよ」
いつもと違うトーンの声。
子どもらしさもなく、まるで大人のような話しぶり。
そこには、哀しさも含まれていて。
ベランダの柵に身体を預けるようにして話すシルエットが見える。
何となくそれをぼうっと見つめたままで。
「…うん。そうだね。でもさ、「そっち」に私はいるんでしょう。
だから…もう「こっち」のことは忘れていいから。
…分かってるよ。でも、貴方には一応私がいるわけだし。
もう、こうして連絡をとるのはやめよう」
話す度に、Aの声が震えていく。
鼻を啜るような声が聞こえる。
「…ありがと。「そっち」の私を頼んだよ」
そう一方的に言って、彼女は勢い任せに電話を切った。
ふうとAは大きく溜息をつく。
ふと空を見上げて、携帯電話を見つめた後、
「…あっ。帰って来てたんですね。おかえりなさい」
何事もなかったかのように、カーテン越しに安室の姿を捕らえる。
わざとらしく音を立てて笑顔で男を出迎える。
その目の端には雫が光っていた。
そんな彼女の腕を取り、携帯電話を見つめる。
「…やっぱりその写真は君だったんだね」
背面に挟まれた仲良く映る男女のツーショット。
見て見ぬ振りをしていたが、そこに映る女はどこか目の前の少女の面影があって。
「無理に、「こっち」に染まろうとしなくていい」
歪んだ顔でこちらを見るAを抱き締めた。
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Nattu(プロフ) - 慎さん» すみません今気づきました〜;;遅れてすみません;;作品違うのに遊びに来てくれて嬉しいですいつもありがとうございます!好きな作品被りで嬉しいです〜! (2023年1月11日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - Nattuさん〜!新作投稿ありがとうございます😊まさかの供給に少し驚きました。コナンの世界は私も好きなので今から凄く楽しみです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨今作品も変わらず、応援しております´ω`* (2023年1月2日 22時) (レス) @page3 id: a9894f14eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年1月2日 22時