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まさか安室が来るとは思っていなかった。
むしろ来てほしくなくて先に捨ててしまっていたのに、勘が鋭い彼には敵わないらしい。
「はい、Aちゃん。お疲れ様でした!」
目の前にオレンジジュースが置かれて、思わず目を背ける。
「向こう」の世界で会議をしたり上司に意見を言う以上に、学校という世界は難しい世界だと感じた。
所謂、公開処刑だ。
よくもまあ、幼少期の自分はぬけぬけと手を挙げていたと思う。
帰宅しても尚、羞恥心が拭えずどこかむず痒い気分だ。
「学校なんて行く機会ないから凄く楽しかったよう。
Aちゃんのおかげだねえ」
そう無邪気に言う梓を責める気持ちになれない。
文句が言いたくなってカウンターのほうも見るも、男はいない。
「安室さんなら用事があるって少し出て行ってるみたいだけど」
「そうです、か…」
大方、降谷としての仕事だろう。
(…あの人、私のこと詮索したがる癖に自分のこと話さないじゃん)
「ご馳走様でした!
今日は来てくれてありがとうございました!」
一気にジュースを飲み干して、ランドセルを背負う。
梓の見送る声も他所に、意識は彼に向いていた。
姿が見えなくなったのはつい先ほどだ。
そんなに遠くに行っていないだろう。
携帯電話を鳴らせば、
「どうしたんだい」
すぐに彼は電話に出た。
「今日の晩御飯どうしようかなと思って」
「ああ。今日は遅くなるから用意しなくて構わないよ」
「そんな訳にもいきませんよ」
電話口に耳を澄ませ、彼以外の音を辿る。
ざわざわと人通りのある雰囲気。
軽快な横断歩道のメロディ。
数メートル先の横断歩道と同じ音がして、
(あ、いた)
ビルの裏に身を隠すようにして電話している男の姿を見つけた。
その近くには眼鏡をかけた部下がいる。
「君の圧に負けたよ。じゃあ、和食がいいな」
「了解です。気を付けて帰ってきてくださいね」
遠くに見える彼はすぐに電話を切って、話を続けた。
風見は大丈夫なのかと尋ねているようだが、安室は困ったように笑っている。
そして、すぐに真剣な顔をして二人で話をし始める。
(漫画で見てたけど、ほんとに透さんはスパイみたいだな)
そう感心していると、
「尾行するならもう少し上手くするべきだ」
また電話が鳴って、彼は手をひらひらと振った。
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Nattu(プロフ) - 慎さん» すみません今気づきました〜;;遅れてすみません;;作品違うのに遊びに来てくれて嬉しいですいつもありがとうございます!好きな作品被りで嬉しいです〜! (2023年1月11日 16時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
慎(プロフ) - Nattuさん〜!新作投稿ありがとうございます😊まさかの供給に少し驚きました。コナンの世界は私も好きなので今から凄く楽しみです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨今作品も変わらず、応援しております´ω`* (2023年1月2日 22時) (レス) @page3 id: a9894f14eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2023年1月2日 22時