シアワセ【そらる】 (ページ7)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:2,833 hit

７ページ7

リビングにおいてあるソファに２人で並んで腰を下ろし、入れなおした温かいココアを彼女に手渡す

「A、答えたくなかったら無理には聞かない。でもなるべく教えてくれると嬉しい。少しは力になれる、と思うから」

本人に暴力受けてますかなんてそんな情緒もないことをいきなり聞けるはずもなくだいぶ遠回しな言い方になってしまったのが行けなかったのか、はたまたなにか食い違いがあるのかはわからないが目の前の彼女は首を傾げるだけだった。

「えっと、、なんのことかわからないですけども今日おうちに泊めてくだってることは感謝してます！」

お力添えもう貰ってますよ！と屈託のない無垢な笑顔を向けられる。そういう事じゃない。俺が言いたいのはそうじゃないんだよ
どう伝えようか悩んだ末に俺は少しオブラートに包みながらも聞きたいことを単刀直入に聞くことにした
多分この子には遠回しに言っても本意は伝わらない気がして

そして驚くべき言葉が次から次へとAの口から紡がれていった

これは、この傷たちは愛なんだと
私を愛してるがゆえの行いで、傷つけようと思って傷つけてきているわけではないと
少し感情的になりやすくて荒っぽいところもあるけどそれはすべて私のためで私を思ってやってくれていることなんだと
それに、もし怪我をしても私の出来が悪いせいなのにごめんねとわざわざ謝ってくれるから。

まるで鈍器で頭を殴られたような感覚で開いた口が塞がらなかった。この子は何を言っているんだ。暴力が愛？自分を思ってのこと？
たとえAの出来が悪いからってそこまでする必要性は絶対にないはずないだろう

俺が怖かったのはAのその狂った思考だけでは無い
あろうことか、Aは笑みを浮かべていた。自分を傷つけてきた相手の話をしているにも関わらず笑みを浮かべ口角を上げ少し嬉しそうに話すそんな姿を見て恐怖心を隠せずにいられるだろうか。答えは否だ

洗脳の一種を受けているのかと言うくらいに振る舞う彼女は歪んでしまっている。こんな無垢で純粋な少女をここまでするなんてそいつらは人間なのかと疑ってしまうほど

でも、そんな彼女にこれ以上口を開けなくなった
その状態が嫌だとAが言わない限り、助けを求めない限りきっとどうすることも出来ない
だから悪あがきをすることだけは許して欲しい

「また、いつでもうちにおいで」

翌日、Aには俺の連絡先を持たせてから家に帰ると言い張る彼女を見送った