お父さんに無理矢理鍛錬させられたので死なない程度に頑張ります【鬼滅の刃】

第三十五話 千載一遇 ページ35

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Aの動きに、鬼の顔が歪む。



何なんだこの人間は。
俺の攻撃を全て防ぐ力量も無いくせに。
唯一鬼の頸を斬れる刃も溶けているくせに。


「何で俺の攻撃があたらねぇんだよぉぉぉ！！！」


そう。Aは鬼に攻撃を仕掛けていない。いや、刀が溶けている為仕掛けられない。だから今Aは鬼の攻撃をひたすら避けているだけなのだ。



刀を使わず、自分の第六感と脚力を駆使して。



そしてAばかりに気を取られてはいけない。宇髄の攻撃も防がねばならない。


「さっさと溶けやがれぇぇぇ！！！」


「うるせぇんだよ！黙って頸斬られてろぉ！！」


今までこんな人間共は見たことねぇ。刀を使わずして、鬼の攻撃を避けれる訳がない。

頭では分かっている。攻撃を仕掛けてこない小娘を相手するよりも先に、柱を殺した方が良いのだと。

だが、小娘の動きが視界にちらつく。
小娘が何をしでかしてくるのかが分からない。ずっとそのまま逃げ続けてくれるのなら話は簡単だが、溶けた刀といえど、頸を斬れる刀を不意に振りかざしてこないとも限らない。




一方Aも体力が限界に近づいていた。鬼が言う様に刀を使わずして攻撃を回避するなんて無茶である。それでもAの足は動いていた。

これは父親との鍛錬から逃れる為に身についた体力と速さだけではない。本人は気づいていないが、雲の呼吸の使い手は瞬発力と脚力が他の呼吸よりも優れている。

使い手によるが、雲の呼吸は型の範囲は広いが一つ一つの攻撃の威力は弱い。それをカバーする為身体機能を向上させているのだ。


『(どうしようこの状況)』


宇髄さんは何度も鬼の頸を狙ってるけど、鬼はこっちの作戦に気づいてる。だから先刻よりも頸の硬化が進んでいる。


『(こーゆー時、お父さんならどうするんだろう)』


あの人は強いし、頭もいいから千載一遇を作るのなんて簡単だと思う。



『…あ』


ふと何かが脳内をよぎった。
そうだ。私にはあれがあったじゃないか。
鬼にどれくらい負傷させれるか分からない。けど一瞬。一瞬でも頸の硬化を弱体化できるのなら。

足に力を込める。多分自分の中で一番速い速度だったと思う。じゃないと、鬼の攻撃にあたらず、目の前に鬼の驚いた顔なんて無いと思うの。



「てめっ…！」


『これでもくらえ！！』




私が鬼の目に投げたのは、お父さんがくれた藤の花だった。






"千載一遇"

(生きて帰る為に)

(使える物は全部使ってやる！)

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