白い30日間 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:4,476 hit

本題ページ3

「ありがとう」

ごく自然に出た言葉は、今の素直な気持ちを表していた。
射し込む朝焼けに、天使は溶けたかのようにぼんやりとしている。

「いえ…笑顔が素敵な方ですね。」
「ふふ、そうでしょ。」
「ええ。」

朝日に反射する写真立てを見つめながら答える。
写真の中の彼女はこちらを見つめ、目を細めて笑っている。

少し短くなったお線香を見やり、ふと思う。
「でも天使なんでしょ？気持ちは嬉しいんだけどなんていうか…大丈夫なのか…というか…」
形式的にお線香だし、としどろもどろに伝えると天使はああ、と明るく返事をし、
「故人を悼む気持ちに立場は関係ないですからね」
と、鈴のような声で笑った。
話している間にも控えめにふよふよと浮いている。

この女の人が誰なのかとか。どうして亡くなったのかとか。
天使は何も聞いてこなかった。
それがありがたかった。

「あ、そうそう。言いかけたことの続きをどうぞ？」
「………？」
「いや、なんか言いかけてたじゃん」
「……ん？ああ！」
「忘れてたのかい」
「いや、ラグがすごすぎるんですよ。さっき言いかけてたでしょみたいに話し振りましたけど何十分も前のことですからね」
「失敬」

まあいいですけど…とぷりぷりしている。
2人向き合ってふふ、と声が漏れる。
どこが正面かわからないけど。

温かい空気はそのままに、少ししんみりとした雰囲気は笑い声に包まれた。

天使は一つ息を吸い、こう告げた。

「私は、あなたを守りにきたんです。」

「守りに…てことは俺死ぬの？」
「まあ…放っておくとそうなるかもしれないですね」
「物騒だなあ」

死ぬかもしれない事象から守りに来た、ってヒーローみたいだと呑気に思っていると

「なんだかわかりませんが、良くないモノがあなたの未来を襲おうとしています。」
「良くないモノ」
「ええ。なので呑気にしていられませんよ！あともう少し驚いてください。」

なぜか一括された。やっぱエスパー？
死ぬって言われても現実味ないしな

「良くないモノっていうのが影みたいな感じであなたにくっついてるんですが、今も片鱗が見え隠れしています。」
「ええ…うーん、守ってくれるって言ったってどうやって？」
「それはですね、私がついてます！」
…鼓舞激励？
「それは嬉しいんだけど、護衛の方法を聞きたいんだよね…厚かましいお願いだけど」
「ですから、私がついてますよ」
首を傾げるとふふん、と至って真面目に同じことを繰り返してぴかぴか光っていた。