検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:4,473 hit

朝の香り ページ2

「もしもし」
『もしもし、起きてた?』
「うん、怪奇現象に悩まされてた」
『…は?』

うん、そうなるよな。
間の抜けた友人の反応を聞いて頷く。

ちらっと光の方を見ると怪奇現象じゃないですといわんばかりに左右に揺れてる。
首を振ってるつもりだろうか。

横向きになり、スマホの『照』の文字を見ながらことのあらましを説明した。



『…夢?』
「俺もそう思いたいけどまだ自称天使が横いるんだよね」

横というより後頭部にいる気配を感じる。
振り向くと、微動だにしない光があった。

照と話してるのは現実だし、信じざるを得ないか。
光を見つめながらそんなことを考える。

『…俺こういうのわかんないけどさ、なんかふっかに伝えたいことあるんじゃねえかな』
「そういえば、言いたいことあったっぽいけど聞いてないんだよね」
『とりあえず話しだけでも聞いてみたら?』
「…まあそれもそうか」

自称天使の方を見ると今度は縦に体を振ってる。体って表現が正しいかはわからないけど。

「そういえば、何か用あったんじゃないの?」
ふと気になって聞いてみる。
最初に聞くべきだったんだけど話し聞いてもらっちゃってたな。
『あー、昨日出勤だったじゃん?この前も土曜日なしだったし体大丈夫かなと思って』
「なに優しいじゃん…」
『はは、まあ元気なら良かった。いつか飯行こ。じゃ、また明日』
「あいよ、心配ありがと」

なにかと気にかけてくれる友人に感謝をし電話を切る。
光の方に向き直ると、いい友達ですねと笑っていた。

上体を起こし、ぐっと体を伸ばす。
休日にしては早い目覚めに勿体無いような、でも得した気分になった。


「話し聞く前に、やりたいことあるんだけど良い?」
「いいですよ」
「ありがと」



ベッドから立ち上がり、顔と歯を洗う。
暖房や加湿器をつけながらもう一度寝室に戻り、カーテンを開ける。
少しずつ明るく色を帯びる空。

棚の上にある愛しい人の写真の前に、お線香をあげる。
一本の煙が上に立ち昇るのを見て、手を合わせて目を瞑った。
一つ息を吸えば、彼女の死を実感させる香りが肺を満たす。

特になにを語りかけるわけでもなく、ただ手を合わせる。
話しかけすぎても俺の声が気になって成仏できなかったりするかもと思い途中から合掌だけにしている。

何十秒と無音を過ごし、ゆっくり息を吐いて肩の後ろにいる光に向き直る。

白く漂うそれはただそこで光っているだけなのに、俯いて、静かに悼んでいるような感覚がした。

本題→←夢だと思った



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (14 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
34人がお気に入り
設定タグ:SnowMan , 深澤辰哉   
作品ジャンル:ファンタジー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Bear. | 作成日時:2022年1月31日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。