[暗殺教室] 眠れる君へ。[赤羽業] (ページ17)

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fiftyone ページ17

医者に連れられた部屋では色々な検査をされた。

「呼吸音をみますね〜。服を上にあげてください」

渚くんに会いたいと思いながら、言われるがままに服を捲ると
医者の隣にいる看護師の顔がわかりやすく引き攣った。

俺自身がそれを見たら心が折れてしまうと思ったから見るのをやめておいた。

いちいち確認しなくても、
一回りも二回りも細くなっていた手首が全てを物語っている。

ゴツゴツと不自然に骨が浮かび上がる手は気持ち悪いことこの他ない。

刺さりっぱなしの点滴が嫌に存在感を主張している。

「──はい、検査は終わりです。

あとは私の質問に答えていただくだけですね。
声が出しにくいでしょうから首を縦か横に振るだけで構いませんよ」

にこやかに話す医者に、
こくりと首を縦に振る。

「ではまずひとつめです。

猫は好きですか？」

「……ぇ、」

予想していた質問より随分とレベルの違う問いが来て、思わず声が出る。

もっと緊張感のある質問かと思っていた。

それこそ、いつ頃からご飯は食べていませんか？だとか
こうなった心当たりはありますか？だとか。

そんな考えはよそに、二つめの質問も三つめの質問も

ずっと他愛のないものばかりだった。

「では最後の質問です。

────ご両親方のことは、好きですか？」

それは、

今までにされたどの質問より重たいものだった。

ぐらりと地面が揺れた気さえして、思わず息を止める。

今までのくだらない日常的な質問は警戒心を解くためのものだったのか。

投げ掛けられた質問には何も答えられず、ただ固まっていた。

だって

今の俺には、

親の顔すら思い出せない。