⭐︎ ページ26
.
「…」
少し迷った後、目の前の伊藤くんを見据えて、私は言った。
「私は、そう思ってる。その人がどう思っているかはまだ確実には分からないけど…、
とっても、大事な人なの…！」
感情が昂って思わず声が大きくなってきたところへ、
急に個室の引き戸が開いた。
「すまんすまん、遅くなってもうて〜！」
室内の若干緊迫した雰囲気とはまるで違う、のんびりとした言葉が聞こえ、今まさに私が思っていた彼が現れた。
拳に込めていた力がふっと抜けると同時に、今の私の言葉を聞かれてたんじゃないかと顔が熱くなった。
「あ…センラくん」
「…なんだよ、遅えよ折原」
ホッとした声の私とは対照的に、伊藤くんが不機嫌そうに言った。
「会議が長引いてもうてなー、すまんて」と大して悪びれず言ったセンラくんは、迷わず私の左隣に座る。
掘り炬燵式の座敷席なので、普通に椅子に座るよりも距離が近い。
ただでさえ、さっきまで思っていた人が急に現れたことで驚いているのに、いつもの彼の香水の香りがふわりとして、それだけで胸がさらに高鳴った。
「お前なんでそっちなんだよ」と言う伊藤くんを、
センラくんが「男二人で並んだら狭いやろ、それにお前の話を聞くために来たんやからこっちの方が都合ええやろが」と黙らせた。
その後、さっきの話題が持ち出されることもなく、伊藤くんはまた事業の話を始めた。
センラくんも最初のうちは黙って聞いていたものの、段々と反論を口にするように。
伊藤くんも話がうまいと思っていたけど、営業歴の長いセンラくんの方が何枚も上手で、伊藤くんの話の綻びを、一つずつ指摘する。
ついに伊藤くんは、イライラしながら話を終わらせた。
「折原、一体何なんだよ！？俺の話を聞きたいって言うから、今日星合と一緒の場を許可してやったのに…！」
「まあまあ、話を聞きたかったのは本間やからね、でも俺が聞きたかったのはそっちの話じゃないからなあ」
伊藤くんとは対照的に飄々とした態度のセンラくんは、睨む伊藤くんに怯むことなく言った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» 白雨さんー！お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！勝手に心の中で師と仰ぐ白雨さんにそんな風に言っていただけるなんて、とっても嬉しいです。引き続き温かい目で見守っていただけたら心強いです、また覗いてやってください〜！ (9月4日 12時) (
レス) id: 452c1db09c (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - セさんルート完結おめでとうございます〜！私はやっぱりしろ鮎さんの書く文章が大好きです……！展開も、表現も、ストーリー全体も全て飽きなんて感じさせなくて、心から尊敬します。未だに他の小説も読み直したりしてます。別ルートのお話も楽しみにしております！ (9月1日 0時) (レス) id: 4da6c03140 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» わー！ちぇろさんだ！お久しぶりですご無沙汰してます〜！毎度宣伝しないのに見つけてくださって、コメントまでくださってありがとうございます！ホントに長い間読んでもらって、作者冥利に尽きます。しばらくこのシリーズが続くのでまた次作もよろしくお願い文字数 (8月23日 19時) (レス) id: 452c1db09c (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ - しろ鮎さんの小説を初めて読んでから約4年が経ちましたが今もこうして新しいお話を見つけることができて幸せです。これからもしろ鮎さんのペースで更新待ってます！連投失礼しました、次のシリーズも楽しみにしています！ (8月23日 2時) (レス) id: cd65e0c157 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ - お久しぶりです！素敵なお話をありがとうございました！モチーフになっている七夕曲、大好きな曲なので歌詞が元になったセリフが出てきてキュンキュンしました！幼馴染の世話焼きセさんという設定すごく刺さりました… (8月23日 2時) (レス) @page31 id: cd65e0c157 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろ鮎
| 作成日時：2023年7月24日 16時
