⭐︎ ページ25
.
「あーごめん星合、疲れたかな」
流石にその辺は気を遣ってくれたらしく、伊藤くんが事業の話を途中で止めてくれた。
少しホッとしたのも束の間、伊藤くんは今度はおずおずと話し出した。
「そうだな…折原が来る前に話しておかなくちゃだよな」
「？」
その先を促すように視線を向けると、彼は何故か照れたような表情をしている。
「あの話…考えてくれた？」
「あの話って？」
「ほら、その…付き合ってくれ、って話」
「え、あ、………あぁ」
いつ出してくるのかとは思っていたけど、返事はしづらい話なのでそれ以上は反応できなかった。
期待を寄せるような目でこちらを見られたので余計に言いづらかったけど、意を決して口を開いた。
「申し訳ないけど、伊藤くんとは付き合えない、かな」
「それって、星合が星詠みだから？」
「うーん…」
なんと答えようか迷っているうちに、伊藤くんは畳み掛けるように言ってくる。
「前にも言ったけどさ、男がいた方が星合の力は強くなるんだろ？だったら俺がいた方が良いじゃん。俺も星合の力を借りたいって思ってるんだし、お互いに都合良いだろ？」
「いや、そういうの以前に」私の気持ちが、
と言おうとしたのだけど、
被せるように言ってきた伊藤くんの言葉に固まった。
「大体、そんなしきたりに付き合ってやれる男なんて、そうそう居ないだろ。正直面倒だし」
「っ、」
それは、私自身も思っている事だった。
「俺ならその辺許容できるし、星合にとっても良いんじゃないの？」
少し前までの私なら、反論できずに俯いて、なんなら頷いてしまっていたかもしれない。
でも、今は違う。
“そういう一族の決まりとか関係なしに、Aのことは大切やって思ってるよ”
彼が、少し前に言ってくれた言葉を思い出す。
優しく笑って言ってくれた彼の表情や、その時の手の温かさや、周りの湿気の多い空気の感触だって、鮮明に覚えていた。
膝に置いていた手を、ぎゅっと握った。
「…私は、信じてる。星詠みだとか、織姫とか彦星とか関係なく、私自身を大事にしてくれる人が居るって、そして、その人の事を信じてるから」
私がそう言うと、伊藤くんは困惑したような表情を見せた。
「その人、って。もうそういう奴がいるってこと？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» 白雨さんー！お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！勝手に心の中で師と仰ぐ白雨さんにそんな風に言っていただけるなんて、とっても嬉しいです。引き続き温かい目で見守っていただけたら心強いです、また覗いてやってください〜！ (9月4日 12時) (
レス) id: 452c1db09c (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - セさんルート完結おめでとうございます〜！私はやっぱりしろ鮎さんの書く文章が大好きです……！展開も、表現も、ストーリー全体も全て飽きなんて感じさせなくて、心から尊敬します。未だに他の小説も読み直したりしてます。別ルートのお話も楽しみにしております！ (9月1日 0時) (レス) id: 4da6c03140 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» わー！ちぇろさんだ！お久しぶりですご無沙汰してます〜！毎度宣伝しないのに見つけてくださって、コメントまでくださってありがとうございます！ホントに長い間読んでもらって、作者冥利に尽きます。しばらくこのシリーズが続くのでまた次作もよろしくお願い文字数 (8月23日 19時) (レス) id: 452c1db09c (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ - しろ鮎さんの小説を初めて読んでから約4年が経ちましたが今もこうして新しいお話を見つけることができて幸せです。これからもしろ鮎さんのペースで更新待ってます！連投失礼しました、次のシリーズも楽しみにしています！ (8月23日 2時) (レス) id: cd65e0c157 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ - お久しぶりです！素敵なお話をありがとうございました！モチーフになっている七夕曲、大好きな曲なので歌詞が元になったセリフが出てきてキュンキュンしました！幼馴染の世話焼きセさんという設定すごく刺さりました… (8月23日 2時) (レス) @page31 id: cd65e0c157 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろ鮎
| 作成日時：2023年7月24日 16時
