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深澤side
深澤「よし、みんなで上あがろうか。夕飯できてるよ」
目黒「おつかれっした〜」
ラウ「お疲れ様でした！」
阿部「お疲れ様でした」
みんなそれぞれ上に上がっていく。
俺は入り口の鍵が閉まっていることを確認して、店を見渡した後に電気を消して、1番後ろの阿部ちゃんについて上にあがった。
ラウ「それでね、パリ旅行に行った時の話をしてくれて」
夕食を食べながら、話が盛り上がる。
いつもならみんなが食べ終わるまでみんな席について待ってることがほとんどなんだけど、今日は阿部ちゃんが先にお風呂入るねって行って、席を立ってしまった。
シンクに食器を置いて、服を取りに行ったのかリビングを出て行ってしまう阿部ちゃん。
2人も珍しいと思ったのか、3人で顔を見合わせた。
深澤「俺ちょっと様子見てくるね」
ラウ「はい、片付けはやっておくんで大丈夫ですよ」
深澤「ありがと」
廊下に出て、阿部ちゃんの部屋の前で出てくるのを待つ。
服を取りに行っただけならすぐに出てくると思ったけど、5分経っても出てこない。
本格的に心配になってきたので、ノックをして声をかける。
深澤「阿部ちゃん、ふっかだけど」
声をかけても返事がない。
ごめん開けるね、と扉を開けると、そこにはベッドに座ってまっすぐ前を見ている阿部ちゃんがいた。
深澤「どした、調子悪い？」
阿部「ううん」
深澤「…なんかあった？」
俺も隣に座って、同じ方向を向くけど、見えるのは綺麗に本が並べられた棚だけ。
阿部「幸せだなって、思って」
そう呟いた阿部ちゃんは、俺の方を向いて言葉を続ける。
阿部「今回の入院期間にね、俺もう死んでもいいって何回も、何十回も、わかんないくらいたくさん思ったの」
小さい頃から入退院を繰り返して、退院しても自分の思うように生活ができなくて、家でも機械に囲まれることがある阿部ちゃんの言葉は重たい。
阿部「でも、戻ってきてよかったって、そう、思ったんだけど。今度は、幸せすぎて、それが当たり前になるのが、怖くて…」
そう言う阿部ちゃんの手は少し震えていて。
思わず両手で阿部ちゃんの手を包んだ。
深澤「当たり前の幸せにしていいんじゃない？死にたいって思った気持ちも幸せだって思った気持ちも、どっちも大切な阿部ちゃんの気持ちだよ。どっちの気持ちも、俺が受け止めるから」
阿部「…うん」
静かに頷いた阿部ちゃんの手は、確かに暖かかった。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
