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目黒side
目黒「苦しかった？」
阿部「…わかんない」
目黒「そっか」
阿部「…ごめんなさい」
目黒「阿部ちゃんに怪我がなくてよかった。どうしよっか、お薬飲む？」
まだ目は合わないけれど、ゆらゆらと視線が揺れている。
お薬飲もうか、とすこし強引だけど飲む方向に持っていって。
力が入らない阿部ちゃんが立ち上がるのを手伝って手を繋いで、キッチンからペットボトルの水と、俺の部屋に寄って一番どうしようもない時に飲む液状の薬と眠るための薬を取って阿部ちゃんの部屋の扉を開けた。
いつもは綺麗に並んでいるクッションや枕がベッドの上に散乱していたり床に落ちているのを見て、ここでも自分と格闘した跡が見えて苦しい。
軽く整えて俯いたままの阿部ちゃんを淵に座らせる。
目黒「お薬自分で飲める？」
阿部「…うん」
目黒「ん、開けたから溢さないようにね」
少し震える手にそれを渡して飲み込むのを見守っていると、飲んでから小さく息を吐いた阿部ちゃんと目があった。
阿部「、ごめんね」
目黒「うん」
阿部「…どうしても、切ったところから身体が熱くなるかんじとか、刃が腕に食い込む感覚とか、を…思い出して。我慢できなかった」
目黒「…うん」
阿部「…だめって、わかってた」
目黒「…うん」
分かってる。この荒れた部屋とテーブルの下に潜り込む姿を見て。分かってるよ。
でもそこで、俺のことを思い出して欲しいんだよ。
目黒「阿部ちゃんが1人で耐えてたんだなって、お部屋見て分かったよ。だから、苦しかったら俺のこと起こして。お願い」
やっぱり夜は人を不安にするのだろうか。
いつだって自分を傷つけるのは夜だった。
薬もうまく効果が出る時もあればそれ以上に不安が勝る時もあるようで、言い聞かせるように両手を握って顔を覗き込むとぽたぽたと涙で手が濡れた。
その後すぐに眠剤を飲ませたら疲れもあったのかすっと眠りについた阿部ちゃんに布団をかける。
水を飲もうとリビングに戻ると、床に転がったカッターが目にはいる。
暗い中にぽつんと存在するそれはなんだか俺までも不安に引き摺り込まれそうで、雑に拾い上げて棚に戻した。
——————fin
⭐︎
お話がいっぱいなのでいちど短編集を閉じます！詳しくはこの短編集のトップページをご確認ください。ここまでお読みいただきありがとうございました。
終わり
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
