Snow Dome 2（雑多短編集） (ページ44)

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手から聞こえる声ページ44

※同性愛(ふかあべ)

阿部亮平:聴覚障害

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深澤side

阿部「目黒くん、かっこいいね」

深澤「そう？」

阿部「手話も、初めてなのによく伝わる」

阿部ちゃんが最近夢中になって見てるドラマは、中途難聴の男の子を取り巻くお話。

主人公の想くんを演じる目黒くんは、確かに男の俺から見てもかっこいい。でも、その目黒くんに阿部ちゃんが夢中なのが気に食わなかった。

深澤「俺の方が手話上手だよ」

阿部「それは俺と一緒にいる時間が長いからだよ」

ドラマの途中で話しかけてたら、今はやめてとついに止められてしまった。食い入るようにテレビを見る阿部ちゃんになすすべなく、見つめることしかできないのが悔しかった。

1番近くにいるのは俺なのに。

阿部「目黒くん、どんな声なんだろう」

ドラマの中で、健聴だった頃からの友人に声をかけるシーン。阿部ちゃんは声がわからないからいつもは興味なさそうだけど、今回は気になったらしい。

深澤「…少し低くて、柔らかい感じ」

阿部「やっぱわかんないや」

聞いておいてすぐに興味を無くしたのか手元でスマホを開く。

それを遮るように手を伸ばすと、「なに」と少し不機嫌そうな顔。

深澤「俺の声は、気にならないの」

こんな嫉妬丸出しな質問、いつもならしないだろう。

でも悔しかったんだ。ぽっと出の男に夢中になる初恋の幼馴染を見るのは。

少し驚いたように目を見開いた阿部ちゃんは少し考えるそぶりを見せた。なんとなく恥ずかしくなって、やっぱいい、って言おうとしたけど。

阿部「ふっかはね、手で声がわかるよ」

深澤「…手で声が分かるの？」

阿部「うん。ふわふわ雲みたいなイメージ。あと優しい声だと思う」

そう答えてくれた阿部ちゃんに、嫉妬していた自分が恥ずかしくなった。それを分かってるのか分かってないのか、ふぁ、とあくびをした阿部ちゃんは『明日早いから寝るね』と部屋に消えていった。

あぁ、この恋は実るのかな。片思い歴10年の俺。阿部ちゃんに恋人がいたことは多分ないけど、優しいからモテる。

告白を断る相談は何度も受けた。そんな俺に告白されたら、誰に相談するのだろう。

佐久間かな。佐久間に相談されるのはなんとなく…嫌だな。