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亮平side
こんなことは久しぶり…ううん、蓮と同棲を始めてからは初めてで、ちょっとパニックになってたらしい。
焦って音を立てたところに手を伸ばすと、「亮平ストップ！」と蓮の大きな声が飛んできた。
蓮「足元だけ片付けちゃうからそこ動かないでね。とりあえず痛いところない？大丈夫？」
亮平「う、ん…大丈夫」
蓮「よかった、すぐ片付けちゃうから」
慣れが出てきて油断したのだろうか、いつもより注意力が散漫になっていたのだろうか。扉を開き切ってなかったり朝から頭もぶつけてるし。
亮平「…ごめん」
蓮「だいじょーぶ。そういう時もあるよ」
俺だってお皿くらい割っちゃうし！と言ってくれる蓮。
あらかた片付いたのか、俺はソファに誘導されてされるがままに腰を落とした。
そこで、腕を握っていた蓮からの予想外の言葉。
蓮「やっぱり、亮平熱あるんじゃない？体温計持ってくる」
亮平「…え？」
握っていた手をぱっと離されて、遠くで引き出しを引く音がする。
いくつかの引き出しが開閉する音から察するに体温計が見つからないんだと思うけど、しばらくして足音が近づいてきて、俺の前で止まった。
ピ、と電源が入った体温計を渡されて、仕方なく脇に突っ込む。
しばらくして音が鳴った体温計を渡すと、「うぇっ」と蓮が焦った声を上げた。
蓮「38度あるよ。本当に身体だるくない？」
亮平「うーん…」
38度、と具体的な数字を聞くとだるいような気もしてくる。
朝からドアに頭は打つしお皿は割るしで、調子の悪さはあるような気がするけど。
蓮「ベッドに戻る？布団持ってこようか」
亮平「大丈夫、自分で戻るよ。遅刻しちゃうでしょ？」
蓮「俺、仕事在宅に変えられるか確認して…」
亮平「本当に大丈夫だから。そうやって1人で俺が何にもできないみたいに言わないで」
蓮「ちがう」
朝からこんな言い合いしたいわけじゃないのに。それでも1人じゃ俺がなにもできないみたいなことを言われて、俺だって同棲を始めるまでは一人暮らしだったし風邪をひいても1人でなんとかしてきたんだよ。
蓮「亮平、ちがう。見えないから心配なんじゃなくて、恋人だから心配なの。しんどい時に1人でいる辛さはみんな一緒でしょ、」
顔を両手で包んでくれる蓮は、きっと真剣な顔、というものをしているんだろう。
その優しさに、甘えてみてもいいのかな。
亮平「…ごめん」
俺がそう言うと、ふは、と笑って「布団持ってくるね」と頬から手が離れた。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
