Snow Dome 2（雑多短編集） (ページ39)

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ラウールside

今日は一段と顔色が悪い気がした。

隣のデスクでパソコンと向き合う阿部さん。俺の作業も見てくれて、指示を出してくれたりまだまだ学ぶことしかない。

そんな阿部さんが昔何かあって、それによってこの間調子を崩したことはぼんやり宮舘さんから聞いた。

それからまたいつのまにか日常に溶け込んでいった阿部さん、だけど。

1番近くで阿部さんと仕事をしている俺はもちろん、宮舘さんも、渡辺さんも、向井さんも。ここ最近の様子が少しおかしいことには気づいている。

それでも誰も触れない…いや、触れられないのは。本人がなんでもないように振る舞うのと、実際仕事は何も変わりなく進んでいるから。

何かで気を張っているのか家に戻るとすぐに眠ってしまうけど、部屋で寝たら？なんて誰も言わないのは1人にするのが不安だからだろうか。

その日も午前は滞りなく仕事が進んで、お昼休憩。

阿部ちゃんはこーじくんと珍しく外食に出ていって、俺はだてさんのおにぎりをありがたく頂戴した。

渡辺「なぁ、そろそろ限界なんじゃない？」

宮舘「…うん、どこかで言わないととは思ってるんだけど」

俺の隣に座ってるしょっぴーは身体を乗り出してだてさんを見つめて、しょっぴーの向かいに座っているだてさんは目を逸らして斜め下を見つめている。

この家の人たちに何か事情があるのはみんななんとなく気づいていて。まぁ、俺も実家には絶対帰らないけど。

だてさんとしょっぴーが同じ施設育ちだっていうのは知ってるけど、わざわざみんな“そういうこと”に言及しないから意外と何も知らない。

宮舘「踏み込んで、それでまた阿部が辛くなったら、」

渡辺「でももう既に何かに追い込まれてるじゃん。こっちで聞くしかないんじゃないの？」

また手遅れになるよ。

そのしょっぴーの言葉を聞いただてさんは明らかに動揺していて。唇をきゅっと噛んだのを見て「ごめん、言いすぎた」としょっぴーの方が謝っていた。

ラウ「…俺が、聞いてみようか？」

10コも歳が違う俺なんかが、って思ったけど声を上げずにはいられなくて。

その後、逆に何か話せるんじゃないかみたいな話にまとまって、今日の仕事終わりに本を借りたいという名目で阿部ちゃんの部屋にお邪魔する計画を立てた。