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阿部side
深澤「阿部ちゃんち、久しぶりだ」
阿部「散らかってるけど」
深澤「疲れてたの？あ、夏バテでとか言ってちゃんとご飯食べてなかったんでしょ。だから熱中症になるんだよ」
倒れた次の日、無事お昼頃には退院できて、ついてくるときかないふっかを連れて家に帰ってきた。
仕事は？って聞くと、呼ばれない限り大丈夫、だって。
深澤「阿部ちゃんすぐにメンタル部屋に出るからな〜」
ご飯も買ってきたしゆっくり休もーぜ、とか言って我が物顔でソファにもたれるふっかは相変わらず過ぎて、思わず笑みが溢れた。
昨日はどうなるかと思ったけど、“家族”なんて言葉をふっかが使ってくれたことに、ちょっとそわそわ。
血は繋がってないけど同じ施設で育って、出てもしばらくは2人で生きてきた。お互いいちばん、過ごしてきた時間が長い人だから、きっと家族で間違ってないと思う。
部屋に冷房が効くまでの間、2人並んで買ってきたアイスをあける。
うまー、ってチョコレートの棒アイスにかぶりつくふっかをみて、ひとつ思い出したことがあった。
阿部「ね、ふっか」
深澤「ん〜？」
阿部「むかし、ふっかが誕生日にさ、こっそりちらし寿司持って帰ってきた時あったじゃん。タッパーで」
深澤「…あったね」
阿部「連休だったけど部活があって、後輩に細過ぎて不安だから食えってもらったって」
でも食べきれないから手伝ってって。でも2人とも、お腹いっぱいご飯を食べたことなんかなくて、限界がわかんなくて。
全部食べ切る頃には結構気持ち悪くて、でも、なんとなく満足感があって。
阿部「今の学校に赴任してきて、岩本先生に会って、何ヶ月か経ってさ。夏休みに休日出勤してたら見慣れない手提げを持った岩本先生が出勤してきてさ」
深澤「ふふ…うん」
阿部「阿部先生、お弁当作り過ぎちゃったんで食べませんかって。でかいタッパーで」
毎日お弁当を作ってもってきて、しかも筋トレが趣味だから色々考えられた食事を毎食してる人が、作りすぎるなんてことあると思う？
阿部「不思議に思ったけど、人が作ってくれたご飯を久しぶりに食べてすごく嬉しかったんだよ」
深澤「変わんねーな、あいつも」
昨日の帰り際、「みなまで言う必要ないことかもしれないけど、俺は何も変わらないし、何かあれば事情を知ってるって消去法で頼ってくれていいから」って言って帰った岩本先生。
頼る先を間違え続けた人生だったけど、ようやく、正解に近づけたような気がした。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
