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深澤side
たぶん今、この中で1番俺が状況を把握していると思う。
余計なことは言えないけど、この先どこかで阿部ちゃんが詮索されるくらいなら早くネタバラシをしてしまいたい。
少し余裕が出てきたのか身体を起こした阿部ちゃんの隣、ベッドの端に座って立っているひかるを見上げた。
深澤「ね、阿部ちゃん。俺が高校の時によく話題に出してた“ひかる”、覚えてない？」
阿部ちゃんと体をくっつけて、顔を覗き込むとしばらく記憶を辿るように遠くを見た後、あっと声をあげた。
阿部「…チョコレートケーキ、ワンホール1人で食べた人だ…え？」
深澤「そ、よく覚えてんじゃん。いわもとひかる、俺の部活の後輩」
バッと顔をあげた阿部ちゃんと、ひかるの目が合う。
その後焦ったように俺を見るから、だいじょーぶ、と落ち着かせるように点滴の刺さった手をさすった。
深澤「たぶんひかるが、1番状況を理解してないと思う。でも、なんで阿部ちゃんの緊急連絡先が俺なんだろうって思ってると思う」
阿部「…ふっか、いつもずるい」
深澤「ずるくないよ。ただ「なんで？」をそのままにしておいて、阿部ちゃん1人の時にちゃんと答えられるかなって心配してるだけ」
ま、完全にひかるが置いてけぼりだけど、俺が1人で勝手に話すわけにもいかないからさ。
味方は多いに越したことはないし、ひかるは大丈夫だって、知ってる。
ただ、高校生の時の俺に、現実を言葉にして話す勇気がなかっただけ。
阿部「…ふっかのことは知ってんの」
深澤「ううん」
阿部「…好きにしたら」
珍しく、諦めたように、吐き捨てるようにそう言った阿部ちゃん。
頑張ったね、って意味も込めて頭を撫でると、嫌そうに身体を捩って逃げられた。
深澤「ん、じゃあ、ひかるなにか質問があればどうぞ？」
岩本「、質問って」
深澤「なんでも答えるとは言わないけど、ある程度、状況把握のために欲しい情報ならあげる」
岩本「いみわかんない」
拗ねたような表情をみせるひかる。
しばらくは俺と阿部ちゃんを交互に見て何か悩んでいたようだけど、意を決したように口を開いた。
岩本「…なんで、阿部先生の緊急連絡先がふっかなの」
深澤「そんなの、簡単だよ」
ぎゅっと、さすっていた阿部ちゃんの手に力が籠る。
あんまりいい思い出ないもんね、俺たち。
でも、2人でずっと生きていくって決めたから。
深澤「俺たち、“家族”だから」
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
