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岩本side
結局、重度の熱中症だったらしく、処置だけでは厳しいと言うことで今夜はとりあえず入院という話になった。
病院の先生も、冷房が極端に効いている場所と効いていない場所の行き来で体温調節が狂ったのではないかという見立てだった。
まだ意識は戻らないらしく、簡易ベッドで横たわる阿部先生をみて、こんなに細かったっけ？と思ったりした。
職場経由でご家族の方に連絡できますか？とのことだったので、一旦学校に戻って、学年主任の先生に報告。先生の緊急連絡先のリストを開いて阿部先生の名前を探す。
岩本「あ、べ、あべ…あった」
指で辿って名前の右側に視線を移すと、電話番号とその間柄、名前の記載がある。
岩本「…あれ？」
何かの見間違いかと思って、何度か阿部先生の名前を辿り直すけど、たどり着く名前と連絡先は、同じ。
まさか、とおもって、きっと同姓同名の違う人だ、と。
少し震える手で、その番号に電話をかけた。
岩本「…ふっか」
深澤「やっほ、久しぶり」
間違いなく、目の前にいるのは、高校の先輩。
部活が同じで、仲良くしてた、先輩。
阿部先生の緊急連絡先は、両親でもなく、親族でもなく、“深澤辰哉”だった。
岩本「なんで、？」
深澤「…さぁ、なんでだろうね」
昔からよく見る、ふっかのへらへらした誤魔化す時の顔。
色々聞きたかったけど、看護師さんに呼ばれてとりあえず病室の方に向かった。
深澤「阿部ちゃん、また痩せちゃったんじゃない？」
まだ眠りにつく阿部先生の顔に手を添えて、ふっかがそう声をかけると、答えるかのように阿部先生はゆっくりと目を開けた。
深澤「あ、起きた。おはよう」
阿部「、っか…」
深澤「そ、ふっか。阿部ちゃん学校で、熱中症で倒れちゃったって聞いたよ」
まだ頭が回らないのか、ぼーっと瞬きを繰り返す阿部先生。
俺が声をかけた看護師さんが先生を呼んできてくれて、診察を受けて、また、3人だけの空間に戻る頃には阿部先生の意識は少しはっきりしてきていた。
阿部「迷惑かけてごめんなさい、岩本先生」
岩本「あ、いや、大丈夫。1日入院になったことも伝えてあるから、ゆっくり休んで」
阿部「うん、ありがとう…ふっかもごめん、忙しいよね」
深澤「だいじょぶ、今は一旦みんな落ち着いてきた時期だから」
いまいち状況が把握できない。その気持ちが表情に出ていたのか、阿部先生は気まずそうに俯いてしまった。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
