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深澤side
その日は結局保護者の方に迎えにきてもらって、放課後の時間と被らない少し早い時間に阿部ちゃんは帰った。
帰りの会を終えた翔太が保健室によってくれて、一通り阿部ちゃんの様子を話す。
そっか、という翔太との間に、嫌な静寂。
2人して、今後の阿部ちゃんのことを考えてたんだと思う。
渡辺「ふっか？」
深澤「…」
渡辺「ねぇ、ふっか！なにしてんの」
ぐっと翔太に手を引かれて、あれ…今俺は何をしていたんだっけ、となる。
阿部ちゃんから一瞬出てきた佐久間の名前と、諦めたような表情。
それがぐるぐる頭を回って、ぼーっとしちゃってたかもしれない。
渡辺「ねぇ、喉赤くなってる」
深澤「…え？」
渡辺「…阿部が、たまにやるやつ」
翔太の悲しそうな顔が目に入るけど、状況を理解できなくて。
深澤「俺、今喉押さえてた？」
渡辺「…うん」
深澤「…そか」
たぶん、阿部ちゃんはどんな気持ちで喉を抑えてるんだろうなって、思ってたら無意識に同じ行動をしてみたい。
俺が、病院を辞めた理由。
患者さんに、周りに、影響されすぎちゃうから。
向いてないよって言われることはなかったけど、患者さんとちゃんと一線を引くことができない俺は病院で働くのは向てないなって、自分で思って。
その後、学校の養護教諭として働き始めて、いい意味でも怪我した、とか、一時的な熱で、とかで生徒と深く関わる瞬間なんてなかったから、これでよかったんだって思ってた。
渡辺「阿部も色々考えてると思うけどさ、ふっかの存在はでかいと思うよ。すごく頼りにしてると思う…だから、そんな辛そうな顔すんなよ」
深澤「…うん、そうだといいけど」
はぁ、とため息が漏れる。
そんな俺をみて翔太は、子どもたちに伝染するからやめろって、強い口調で言った。
深澤「ごめん」
渡辺「とりあえず、佐久間ともさっき少し話して、どうしたらいいかわからないって様子だったから。いつも通りでいいって。友達でいてくれればいいって言ってあるから。たぶん大丈夫」
深澤「うん」
その後、阿部ちゃんは1日休んだ後、学校に来た。
教室ではいつも通り佐久間がべったりついていろんな話をしていたらしく、時間が経つにつれ阿部ちゃんもいつも通り楽しそうにしてたって。
俺のところにも来て、新しくまた用意されたカバンを渡されて、ありがとうございました、って。
深澤「なんかあれば遠慮なくいいなよ」
阿部「…はい」
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
