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深澤side
深澤「阿部ちゃん、あのね、ズボン濡れてるよって、佐久間が教えてくれたんだ」
向かい合うようにしゃがみ込んで、阿部ちゃんと視線を合わせる。
はっとした表情で自分の服を確認した阿部ちゃんは、ぐっと、血が出るんじゃないかってくらい強く唇を噛んだ。
深澤「このままだと身体冷えちゃうから、とりあえず着替えようか。下着の替えある？」
阿部「…ある」
深澤「朝から調子悪かった？」
こくん、と頷く阿部ちゃん。
少し顔色が悪いけど、具合悪いっていうよりは、身体の調子があんまり良くなかったのかなって思う。
深澤「そっか…下着を替えてもいいけど、どうする？」
どうするっていうのは、下着をかえるか、おむつに履き替えるか。
朝から調子があんまり良くなかったってことは、たぶんこの後もうまくいかない可能性がある。
そうなるとしんどいのは阿部ちゃんだし、下半身の感覚がない子だと、別に珍しい状況ではない。
阿部「…下着じゃなくていい」
震える声で、今にも泣きそうな顔でそう言う阿部ちゃん。
深澤「ん、わかった。とりあえずジャージだけ渡辺先生に持ってきてもらおうね」
ちょっと待っててねって、阿部ちゃんの足に大きめのタオルを掛ける。
翔太にジャージを持ってきて欲しいってメッセージを入れて、その間に棚から一つの鞄を取り出す。
入学したての頃の一件の時に俺が元看護師で対応ができるって阿部ちゃんのご家族に伝えたら、預けてくれた鞄。
そこにはおむつとか、吸水シートとか、タオルとか、必要なものが入っていた。
阿部ちゃんをベッドのそばに連れて行って、カーテンを閉める。
ベッドに色々な準備をしていると、トントンとノックされた保健室の扉。
渡辺「阿部、大丈夫？」
一度俺も廊下に出て、小さな声で話す。
深澤「ちょっと失敗しちゃって。たぶん佐久間しか気づいてないみたいで、音楽室から連れてきてくれて」
渡辺「わかった。またお昼休みに様子見にくるし、なにかあれば連絡して」
深澤「わかった、ありがと」
1度目の時の落ち込み方を知ってる翔太は不安気だったけど、とりあえずジャージの入った体操袋を受け取って、再び保健室の鍵を閉める。
阿部ちゃんのいるベッドのカーテンを開けると、ぽろぽろと静かに涙を流していた。
こういうとき、このタイミングで何を言っても響かないし、むしろ自分の殻に閉じこもっちゃう可能性もあるから、俺は淡々と準備を進める。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
