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深澤side
コンコン、と保健室の扉をノックする音。
返事をすると、顔を覗かせたのは今年転校してきた佐久間。
深澤「あ、佐久間。どうした？」
いつもは体育で怪我して保健室に来るタイプの子だから、なんかそわそわしてうまく目が合わない様子が気になって、具合悪いのかなって思ったら。
佐久間「えっと…阿部ちゃん、なんですけど」
深澤「阿部ちゃん？どうかしたの」
佐久間「たぶん、本人もまだ気づいてなくて、えっと、今音楽で、ペアワークしてて、でも朝から具合悪そうで、えっと」
話があっちこっちいって何も伝わってこない。
なんか色々説明してくれようとしてるのだけはわかるから、こっちから順番に聞いていく。
深澤「朝から阿部ちゃん具合悪そうだったの？」
佐久間「うん」
深澤「で、今は音楽の授業だけど、抜けてきたんだね？」
佐久間「そう」
深澤「阿部ちゃんも気づいてないかもって言ってたけど、何か気になることあった？」
えっと、としばらく黙った後。
佐久間「…制服のスラックス、紺だからわかりづらいけど、たぶん、阿部ちゃんのズボン、濡れてて」
あー…なるほど。
大体の話はわかった。
朝から調子が悪そうだったって話もあるから、たぶん、そういうこと。
深澤「わかった、ありがとう。阿部ちゃん廊下にいるよね」
佐久間「…はい」
深澤「おっけ。佐久間は教室戻りな。教えてくれてありがとう」
佐久間「…はい」
俯く佐久間はどうしたらいいのか分からないのだろう。
いや、そうだよね。俺は看護師してたし珍しくない状況だけど…
佐久間と一緒に廊下に出て、佐久間を音楽室に帰す。
すると、不思議そうな顔の阿部ちゃんと目が合った。
確かに、よく見るとズボンの股の辺りが濡れている。
阿部ちゃんは下半身の感覚がないんだけど、トイレとかはある程度時間を決めて、タイミングを合わせれば普通に行ける。
阿部ちゃんの場合は、朝来てからと2時間目と3時間目の間、お昼休憩の終わり頃と帰る前。
でも、調子が悪いとすぐ身体のルーティーンも狂う。
中学入ってから一回、入学したての頃に環境が変わって調子が狂ったのか同じような状況になっちゃったことがある。
その時は体育の見学の時でたまたま翔太が気づいてくれた。
看護師だった俺はこういう状況には慣れてるし、対応もできるから問題なかったんだけど、その時も少しメンタルが荒れたなって思い出して。
とりあえず阿部ちゃんを保健室に入れて、部屋の鍵を閉めた。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月17日 21時
