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阿部side
阿部「はぁ…」
学校が近づくにつれてどんどん重くなる足。
それでも遅刻するわけにも行かないので立ち止まれない。
俺みたいな“施設の子”は、遅刻なんかすれば後ろ指さされる。
そうされてきたわけじゃないけど、なんとなく、たぶんそう。
だから、意地でも学校に行く。
大丈夫、今日も笑えてた。ふっかには心配されたけど、ちゃんと見送ってくれたし、誤魔化せてる、大丈夫。
勉強も苦手ではないし、むしろ好きで、学校も、楽しい場所、だった。
去年までは。
佐久間の心配が現実になっちゃったなぁ、なんて。
そんなことを考えていると、いつのまにか教室の前。
そして、朝礼が始まる5分前。
廊下を行き来する人は、心なしか焦っている。
意を決して扉を開けると、扉近くに座ってた男子グループがこっちを見た。
そして。
「あっ！阿部亮平くんいらっしゃいましたー！」
なんて、叫ぶ。
そしたら当たり前だけど、教室みんながこっちを見るわけで。
俺はその視線をなるべく、なるべく気にしていないふりをして、左端、後ろから2番目の窓際の席まで進んだ。
席に着いて、荷物は膝の上。何も物を出すこともなく、下を向いてやり過ごす。
すると、前の席の椅子が引かれて、どかっと向き合うように1人の男の子が座った。
「阿部ちゃん、ノートありがとね〜！勉強になったわ〜」
机に雑に置かれるノート。
それを見て、くすくすと笑い声がしたり、お前ひでーな、なんて声が聞こえたり。
俺がたくさん勉強するために使ったノート、ふっかが買ってくれたノートは、見るに耐えないものになって帰ってきた。
もちろん、貸した覚えなんてない。ある日、忽然と消えた、俺の、数学ノート。
明らかな、いじめ。
去年までは、佐久間が上の学級にいたから、何もなかった。たぶん。
俺1人になった途端、この有様。
疼く心の傷。
俺は昔、こういう時どうやって乗り切ってきたっけ。
思い出したくもない記憶を引っ張り出して、見つけた、俺なりの答え。
「それなら、よかった」
ノートを差し出した男の子をみて、笑った。
泣こうもんなら平手が飛んできた過去。
俺はニコニコ、いろんな人の顔色を窺って生きてきた。
でも、オレンジ組のみんなとか、ふっか達に出会って、俺なりに生きていけるようになってきたねって、施設のみんなにも言われて、泣いたり怒ったり、最近はできてたんだけどな。
「何笑ってんの、きもちわる」
どこからともなく、そんな声が聞こえた
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
