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深澤side
「ねぇ！昼休み絶対戻ってきてよ！？いつもいつもどこでお弁当食べてるのか知らないけどさ！みんなで練習してるんだからね！？」
ぎゃーぎゃーうるさい学級委員長の女を無視して、俺は教室を出る。
合唱コンの時期は憂鬱。
別に歌が苦手とか、特別音痴であるとか、集団行動が苦手とか、そんな理由ではない。
歌えてるんだし、朝と帰りは参加してるし、文句言うな、という気持ち。
大体成績にも残らないのに任意の練習に参加しないだけでこんなに責められて、正直よくわからない。
俺が憂鬱なのは、幼馴染である彼が心配だから。
渡辺「ふっか」
深澤「翔太、阿部ちゃん」
声を掛けてきたのは去年同じクラスだった翔太。
隣の阿部ちゃんは可愛く手を振ってきたので、俺も振り返す。
この阿部ちゃんが、俺の幼馴染で合唱コン期間の心配の種。
去年は3人一緒だったんだけど、俺だけ翔太、阿部ちゃんとクラスが離れてしまい、日課だった屋上での昼休みの昼食が学校で話す数少ない機会になってしまった。
憧れの学校生活に屋上でのお弁当があると思っていたけど、屋上でご飯を食べるという行為も移動時間とかの都合か飽きが来るらしく、6月になるともう誰もいないことは去年の様子で分かっていた。合唱コンの練習もあるし。
渡辺「この時期が1番屋上が丁度いい気温なんだよな〜」
伸びをする翔太の横で阿部ちゃんも伸びをするが、身体が硬いからか少しぎこちない。
深澤「阿部ちゃん、相変わらず硬すぎ」
笑ってそういうと、少し口を開いたから、言葉を待つ。
阿部「…っこれでも、すーぅとれっち、し、し、しーぃてる、のに」
渡辺「ストレッチしててそれはやばすぎ」
翔太の独特な笑い声が響くと、つられて阿部ちゃんも声をあげて笑った。
みんなは阿部ちゃんが喋れないと思ってる、というか、阿部ちゃんがそう伝えてるんだけど。
本当は、そうじゃない。
吃音症っていって、言葉の発音が苦手なだけ。
俺も阿部ちゃんと最初に出会った時はびっくりしたような気がするけど、幼稚園の時だったし素直な子どもたちが多かったのか、他の子より少し話すのが苦手ってだけで馬鹿にしたりしてくる子はいなかった。
でも、小学生になって学年が上がるにつれて、少し他の子と違うと馬鹿にされたり、酷いといじめのターゲットにされたり。
阿部ちゃんはどんどん学校で話すことが減って、中学に上がる頃には家族と俺の前以外では一言も話さなくなっていた。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
