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渡辺side
渡辺「阿部、落ち着いた？」
阿部「…うん」
渡辺「そっか、6時間目から気持ち悪かったの？」
阿部「そう…だけど」
なんで知ってんの？って顔。
渡辺「佐久間が教えてくれた。俺が教室入ってすぐに、阿部くんが体調悪そうって」
阿部「佐久間、くん？」
渡辺「うん、なんか心配してたよ。いまそこで健康診断受けてる」
阿部「…そう」
渡辺「終わったらお礼いいなね」
そういうと、むすっとした顔をして、何か言いたそう。
阿部が、人に弱った姿を見せたくないのも、人と過度に干渉したがらないのも知ってるから、思うことはわかるけど。
先生としては、できればいろんな子たちと交流を持ってほしいなって。
阿部「…別に、頼んでない」
渡辺「でもあのまま教室にいても、気持ち悪いの治らなかったでしょ？」
阿部「そう、だけど」
複雑な表情をする阿部。
ちらっとカーテンの外を見ると、ちょうど健康診断が終わったようだった。
渡辺「佐久間、こっち呼ぶからね」
阿部「え、ちょ」
たまには強引なのも必要かなって。
カーテンを少し開けて、手招きすると心配そうな佐久間と、その後ろに別の意味で心配そうなふっかがついてくる。
少しカーテンを広めに開けて、佐久間と阿部の目が合った、と思えばすぐにぷいっと逸らしてしまう阿部。
佐久間「阿部くん、大丈夫？」
阿部「…大丈夫」
佐久間「そっか、よかった」
続かない会話。
俺の気持ちが限界を迎えて、阿部に声を掛ける。
渡辺「阿部、ほら。佐久間に何か言うことない？」
たっぷりの沈黙。
耐えられずにもう一度口を開きそうになった時。
阿部「…ぁりがと、先生に、知らせてくれて」
そう、口を開いた阿部は、言い終わるかどうかのタイミングで頭まで布団を被ってしまった。
佐久間の顔を見ると、嬉しそうで、白い肌が紅くなってる。
佐久間「ふふ〜いえいえ！」
渡辺「ほら阿部。ちゃんと佐久間の顔見て」
布団を剥がして、顔を佐久間の方に向ける。
嬉しそうな佐久間の顔を見て、阿部も安心したのか、少し表情がやわらかくなった。
その日を境に、1人での行動がほとんどだった阿部に、佐久間がべったり。
阿部もまんざらではない様子で過ごしているので、まぁ良かったかなって。
まだ、クラスには馴染みきれているとはいえないけど、少しずつ会話をしている姿も見られるようになって。
俺の心も、少し軽くなった気がした。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
