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深澤side
阿部「あ、ふっか」
深澤「深澤先生な。ったく、翔太がふっかって呼ぶから浸透し始めてきちゃったじゃん…」
白衣姿のふっかこと、深澤先生は保健室の先生。
元々看護師さんだったらしく、俺は何度か、この先生に助けられている。
深澤「阿部ちゃんは？次体育？」
阿部「うん、機械体操だから、見学だけど」
深澤「そかそか、いってらっしゃい」
阿部「はーい」
ガラガラ、と後ろで扉が開く音がしたので、ふっかは保健室の中に戻って行ったのだろう。
体育館は連絡通路で繋がってて、一応上履きのまま通れるし、屋根もついてる。
でも、若干スロープがキツくて、うまくいく日は1発で進めるんだけど、なんかうまくいかないと、何度か下に戻されちゃう。
今日は、うまくいかない日。
阿部「…っあ〜」
回数を重ねるほど腕が痛くなってきて、もうやだな、なんて思っていると。
佐久間「押してもいい？」
後ろから、遠慮がちな声。
多分、佐久間くんだってことだけが分かった。もうみんな体育館にいると思ってたからびっくり。
阿部「あ、うん…お願いしていい？」
佐久間「はーい、動くよ」
よいしょ、という声と共に動く車椅子。
スロープの上まで辿り着いて、無事に体育館の入り口に差し掛かるところで動きは止まった。
阿部「ありがとう」
佐久間「いえいえ！」
いつもクラスの輪の中にいる佐久間くんとは、なんだかんだ初めて話す。
なんとなく気まずくて、俺はタイヤを回して体育館の中に入った。
キュッとタイヤの鳴る音で、一瞬みんながこっちを見るけど、すぐにマットを引いたり体育の準備に戻る。
俺は見学の時の定位置と化した、平均台が並んでる隅っこでぼうっとみんなを眺める。
一応授業だから、本とかは持ち込んじゃダメなんだって。
だから、元気に動き回るみんなを眺めるしかやることがない。
お昼ご飯を食べた後で、ぽわぽわして眠くなってきた頃、渡辺先生が顔を出した。
渡辺「おーい、阿部、寝るな〜」
阿部「だって暇なんだもん…先生授業は？」
渡辺「この時間は無いんだよ。いつもはやることあんだけど、今日は何もないから様子見にきた」
隅っこでだらだら渡辺先生と話していると、クラスの中心にいる女の子の1人が渡辺先生に気づいて、こっちに走ってくる。
「渡辺せんせ〜先生もやろーよ」
渡辺「いや、俺はいいわ。授業もどんな」
「えぇ〜」
しばらく粘ったその子は渋々みんなの方に戻る。
その後も、しばらく喋り続けた。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
