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阿部side
テストは、全部100点。
一問でも間違えれば、出来損ないって、言われる。
小学校受験をして頭のいい学校に入った俺は、毎日机に向かって勉強する日々。
周りもできる子が多くて、毎回成績トップっていうのも難しくて。
それでも成績は常に上位だったし、表彰もされた。
でも、ぜんぶ、ぜんぶできてないと俺の親は満足してくれなかった。
そんな環境が当たり前だったから、高校生までは、必死で勉強して、親の機嫌を伺って、テストのたびにビクビクして。
それがおかしいって、大学生になって、人に指摘されて気づいた。
でも、それが当たり前だった俺は、どうしたらいいのかわからなくて。
とりあえず、こっそり始めたアルバイトで、こっそりお金を貯めて。
大学を出るタイミングで、逃げるように家を出た。
大手の会社に就職が決まっていたけど、本当は、あんまり興味がなくて。
適当に求人を眺めていて見つけた会社。
俺とほとんど歳の変わらない人が立ち上げたって見て気になって。
共同生活っていうのにも惹かれて。
決まっていた内定を蹴って、その会社に就職が決まった。
2人は俺を歓迎してくれて、初日はみんなでご飯を作って、食べて…
そんな記憶を引っ張り出していると、だんだん、頭の中がぼんやりしてくる。
右手の温もりだけがはっきりしてきて、そっと、俺は目を開けた。
宮舘「…阿部、起きた？」
阿部「だて、さん？」
起きあがろうとすると、舘さんに身体を戻される。
宮舘「今、阿部熱あるから。あ、やっぱ水だけ飲める？」
阿部「…うん」
されるがまま、上半身を起こして、ストローがささったペットボトルの水を飲んで、またベッドに倒されて。
確かに熱があるのか、汗ばんでいる俺の身体。
ぺったりと張り付いた前髪が気持ち悪くて顔を顰めると、気持ちが通じたのか舘さんが前髪を上げてくれた。
そこで、眠る前のことを思い出す。
阿部「…っ、」
宮舘「阿部」
思わず強く握ってしまった舘さんの右手。
とんとん、と落ち着かせるように身体に手を置かれて、触れたことのない優しさに、溶けそうになる。
宮舘「阿部が、昔何があったのかしらないけどさ」
そう、話し始めた舘さん。
宮舘「阿部の安心できる場所になれたらいいなって、思うよ」
阿部「…ありがと」
今度は舘さんから、強く握られる右手。
その安心感に、また眠くなってきて。
再びそっと、目を閉じた。
——————————————————END
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
