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渡辺side
阿部と涼太が家に上がって行ってしばらくした頃。
俺の私用の携帯が震え、画面が光る。
そこには涼太の名前。
慌てて出ると、水と、毛布と、あったかいタオルが欲しいとのことだった。
何にもわからないけどとりあえず俺も家に上がり、言われた通りのものを準備する。
リビングにいるのかと思ったらいなくて、声がするのは阿部の部屋。
ものを持ってそっとドアを開けると、息の荒い阿部が、ベッドの上で膝を抱えて小さくなっていた。
渡辺「涼太、？」
宮舘「あぁ、ありがと。毛布ちょうだい。水とタオルはそこ置いておいて」
渡辺「あ、うん…」
そういうと、涼太は阿部のベッドに上がり、毛布で阿部を包んで、身体をさすっていく。
昔、施設にいた時のことを思い出すような、光景だった。
俺も、やってもらったことがあるし、パニックになったチビをこうやって、落ち着けたこともあった。
だから、ここでみるのは不思議な気持ちで。
しばらくすると、阿部の息が落ち着いてきて、身体も力が抜けてきたように見えた。
宮舘「翔太、タオルとって」
少しぬるくなってしまったタオルを渡す。
宮舘「阿部、横になれる？大丈夫、俺ここにいるからね」
なんとか身体を倒す阿部と、それを支える涼太。
ベッドに横になっても、背中を丸くして、縮こまってる。
宮舘「少し、目、抑えるからね。あったかいから、落ち着くよ」
そう言って阿部の目元にそっとタオルを当て、背中をとんとんしている涼太。
そうすると、ぎゅっと毛布を握っていた手が、少しずつ脱力していって、タオルが冷める頃には、静かな寝息が聞こえていた。
眠ったのを確認して、涼太がベッドから降りる。
宮舘「いや〜焦った…昔の記憶引っ張り出せてよかった…」
渡辺「俺の、せい？」
宮舘「いや、違うよ。翔太のせいじゃない」
冷めたタオルを畳んで落ち着きがなく手でいじる涼太は、少し言いづらそうに口を開いた。
宮舘「もしかしたら、阿部…」
渡辺「ん？」
宮舘「仕事、してない自分には価値がないって、捨てられるって、言ってた」
スッと、血の気が引く。
俺も涼太も、思い出したくない記憶と、言葉がリンクする。
宮舘「俺はここにいるから、翔太事務所に戻ってくれる？今、事務所の中康二とラウしかいなくて不安だろうからさ」
渡辺「…でも」
宮舘「大丈夫。外回りは今日ないよね？ラウと康二の事務作業見ててくれたらいいから」
そう言われたら頷くしかない。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
