Snow Dome（雑多短編集） (ページ33)

今日:8 hit、昨日:88 hit、合計:225,651 hit

2 ページ33

阿部side

この会社、というか、事務所？は不思議なところで。

一階が事務所になっていて、みんなが仕事をする場所。

二階、三階は家。

この事務所に勤める5人で共同生活を送っている。

あんまり深く聞いたことはないけど、どうやら会社を立ち上げた舘さんと翔太くんは施設育ちで、そういう子が来たら頼りやすいようにってこういうシステムにしたらしい。

家族と折り合いが悪い俺も、それにあやかって、心地よく生活をしている。

みんな深くは話さないけど、年末年始含め、長期休みの間も誰も実家に帰らないどころか家族の話もしないから、それぞれ事情があるのかもしれない。

会社の時は会社の時。

家の時は家の時で、メリハリをつけたい、というのも2人の意向。

だから、

向井「阿部ちゃーん、ゲームしよ！」

阿部「いいよ〜何やる？サモラン？」

向井「仕事終わりなのにバイトか〜」

俺はみんなに家では阿部ちゃんって呼ばれてるし、

ラウ「舘様〜今日のご飯何？」

宮舘「今日はシーザーサラダとドリア」

渡辺「トマト入れないでね」

宮舘「翔太を贔屓するつもりはないからね」

渡辺「えぇ…」

舘さんは、誰が呼び始めたのかわからないけど“舘様”なんて呼ばれてる。

もちろん敬語も外していいし、本当に家族みたいな、兄弟みたいな、そんな距離感。

向井「ふぁ、俺そろそろ寝よかな」

ラウ「俺も〜…歯磨きしてこよ」

舘さんの美味しい夕飯を食べ、順番にお風呂に入り、それぞれの時間をみんなが過ごして、徐々に自分の部屋に消えていくみんな。

俺もそろそろ寝ようかな、と思って残ってた舘さんにおやすみ、と声をかけて部屋に入った。

でも、俺はみんなに言っていないことがある。

カチカチと時計の秒針がやけに大きく聞こえる。

目を閉じても一睡もできない。

気づけば2時を回っていて、日付が変わる前にベッドには一旦入ったはずだから、かれこれ2時間以上寝返りを打ったり時間を見たりして過ごしている。

そうするとだんだん、あ、あの仕事気になる、この仕事、いつまでだっけ、って仕事のことで頭がいっぱいになってきて。

眠れる気配のない俺は、寝ることを諦めて、そっと部屋を出た。

もちろん、もうみんな寝静まっていて、リビングの電気も消えているし、でも誰かがトイレとか、水飲みたいとかで起きてきても不便じゃないように、ところどころに置いてある間接照明だけが光っていた。