Snow Dome（雑多短編集） (ページ28)

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佐久間side

学級交流の予定だった日から数日後。

今日は同じクラスの子が2人とも早退しちゃって、帰りの会は阿部ちゃんひとり。

ちょうど会を終えて、阿部ちゃんが椅子から立つと同時に、トントン、と控えめなノックが聞こえた。

この時間だし、誰か先生かと思って、

佐久間「どうぞ〜」

と声をかけたら、顔を出したのは蓮くんだった。

佐久間「蓮くん！クラスの帰りの会は終わったの？」

目黒「終わったよ！あべちゃんとお話ししに来た！」

佐久間「そっか、少しならいいよ。さっくん先生ちょっとだけ職員室行ってるから、戻ってきたら帰る時間ね」

目黒「分かった！」

佐久間「阿部ちゃん、さっくん先生、職員室に行ってくるね。その間、蓮くんとお話ししてていいよ」

阿部「…ぅん」

駆け寄ってきた蓮くんと嬉しそうに応える阿部ちゃん。

3年生だし、阿部ちゃんはハンデがあるから不思議な光景だけど、蓮くんと阿部ちゃんの会話は成立しているみたい。楽しそうにきゃっきゃと笑い合っている。

なかなか阿部ちゃんは警戒心も強くて笑っているところを見ないから珍しい光景。

ずっと見ていたい気持ちもあったけど、職員室に取りに行きたいものがあるのと、渡辺先生に話があって、教室を出た。

職員室に向かう途中、下駄箱の前で溜まっている子どもたちがいたから、「早く帰りな〜」なんて声をかけながら歩いていると、ちょうど職員室前で渡辺先生と会えた。

少し話し込んでしまった後、阿部ちゃんと蓮くんが支援級の教室で遊んでいることを伝えると、俺も様子を見に行こうかな〜っていうから、ぱぱっと職員室から必要なものを手に取って、教室に戻る。

下駄箱前に溜まっていた子どもたちはいなくなっていた。

帰ったのかな〜なんて呑気に考えながら、渡辺先生と歩いていると。

「でていけよ！」

と、大きな、でも子どもの高い声。

その後ガタガタっと机が動く音が派手に聞こえ、「何すんだよ！」という声と、数人の笑い声もする。

渡辺先生と顔を見合わせて、走って音のする方へ向かった。

佐久間「やっぱり」

勘違いでも気のせいでもなんでもなく、音の出所は支援級の教室。

蓮くんと阿部ちゃんしかいないはずの教室のドアを開けると、信じられない光景が広がっていた。