Snow Dome（雑多短編集） (ページ27)

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渡辺side

亮平くんのお迎えに行こうと教室を出ると、ぱたぱたと追いかけてくる足音。

振り向くと、そこには目黒蓮。

目黒「しょーた先生！あべちゃんのとこ行くんでしょ！」

渡辺「そうだけど、今日来られるか分からないよ？」

目黒「いい！あべちゃんにあいたいだけだから！はやくいこっ！」

普段、みんなに圧倒されて静かにしていることが多い目黒だけど、意思表示ははっきりするタイプ。

こうなると、もう俺が何を言ってもついてくるので、諦めて一緒に支援学級の方へ向かう。

教室が近づくにつれて、目黒は早足になり、いつのまにか駆け出していた。

渡辺「ちょ、走らない！」

ったく、ぴたりと扉の前で止まった目黒は、分かっているのだろう。扉を開けていいのは先生だけだって。

はやく、と言わんばかりに俺の方を見る。

扉を開けて言葉を交わして、佐久間先生の問いかけに亮平くんがもにょっと何か答えたと思ったら、目黒はいつのまにか亮平くんの机の方に駆け寄っていた。

目黒「あべちゃん、おはよ！」

いつのまに手話を覚えたのか、言葉を交えて亮平くんに話しかける目黒は嬉しそう。

亮平くんも嬉しそうに返事をするんだけど、すぐ表情が暗くなる。

俺も屈んで、椅子に座る亮平くんと目を合わせた。

渡辺「おはよ、亮平くん」

阿部「…はよ、ぅ…ござ、います」

はっきりと言葉が聞き取れない亮平くんは、自分で言葉を発するのも苦手。

加えて、発達障害の傾向有り、とのことだったから、自分で話そうという気持ちも薄いのかもしれない。

佐久間「今日はちょっと厳しいかも」

こそっとそう言う佐久間先生に、俺は頷いて答える。

渡辺「亮平くん、行きたくなかったら、行かなくても大丈夫だよ。目黒は、亮平くんに会いたいな〜って、来ただけだから」

じっと俺の目を見た亮平くんだったけど、佐久間の方に視線を移すと、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。

そんな亮平くんを見て、目黒は静かに頭を撫でる。

佐久間「今日の学級交流、お休みする？」

何も答えない亮平くんだけど、ゆっくりと佐久間先生の手を握った。

これは、行かない、ということなんだろう。

佐久間「うん、分かった。今日はお休みしようね。蓮くんにも、ばいばいって」

亮平くんは必死で涙を拭って、目黒と向き合う。

目黒がまたね！と言って手のひらを出すと、亮平くんは、優しくその手にタッチした。