Snow Dome（雑多短編集） (ページ26)

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おれがまもるからページ26

渡辺翔太(30):目黒(阿部)のクラスの担任。

佐久間大介(30):特別支援学級中学年(3・4年生)の担任。手話ができる。

目黒蓮(8):小学校3年生。

阿部亮平(8):小学校3年生。全く聞こえないわけではないが、両耳に補聴器をつけている。ASDの傾向有り。ハンドサインや手話を勉強中。

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佐久間side

佐久間「阿部ちゃん、行けそう？」

大きな声ではっきりと、ゆっくり手話を交えながら話しかける。

阿部ちゃんは俯いてしまい、返事がない。

今日は月に一回の学級交流の日。

俺は要らない文化だと思うけど、学校の意向で、特別支援学級の子と普通学級の子の交流をさせたいって。

普通学級の子たちは、何も思ってないかもしれないけど。

支援学級の子たちには一大事。

だって、普段は数人で受けてる授業を30人くらいいる教室で受けなきゃいけないし、周りはみんな知らない子。授業のペースももちろん早い。

俺がサポートに入るとはいえ、かなり辛いだろうと思う。

特に環境の変化に弱い阿部ちゃんは、以前教室で癇癪を起こしてしまったことを気にしている様子。

一応以前から、この日は交流の日だよって伝えてはいたんだけど、それと気持ちは別物。

事前に言われてたからって、素直に行けるものでもない。

無理やり行かせるのもなんだし、担任は渡辺先生だし、他の先生より遥かに理解があるから今日は休ませようかと思っていた時。

ぱたぱたと走っているのだろう足音と、走らない！という大きな声。

だんだん近づいてきて、扉の前で静かになった。

そして、そっと教室の扉が開く。

俯いてしまっている阿部ちゃんは、それに気づかない。

渡辺「佐久間先生〜一応、迎えに来たんですけど」

遠慮がちな渡辺先生の声。

ひょこっと、その横から顔を出したのは、渡辺先生のクラスの目黒蓮くん。

蓮くんは、色々あって、阿部ちゃんと仲良し。

目黒「さっくん先生、入っていい？」

佐久間「ちょっと待ってね」

俺は俯いている阿部ちゃんの目に入るように、開いた手を横に振る。

すると、ゆっくり顔を上げた阿部ちゃん。

ドアの方を指さすと、パァッと顔が明るくなったと思ったら、すぐにまた暗くなる。

佐久間「蓮くんが、入ってもいい？だって」

阿部「ぃい、よ」

微かな返事だったのに、蓮くんは耳がいいのか聞こえていたみたいで、ぱたぱたっと駆け寄ってきた。