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深澤side
阿部ちゃんが全寮制の高校に入学して、環境がガラッと変わる春に調子を崩すことを予想してたんだけど、意外と持ち堪えた。
でも、本当にたぶん“持ち堪えた”って感じだったんだろう。
夏休みに調子を崩すとはなぁ。
メールが来てないから、朝様子を見に行くって言った佐久間から連絡があり、大丈夫なことを期待していたけど、様子を聞いて、やっぱりかぁ、という気持ちもある。
「深澤先生、受付で佐久間さんという方がお待ちだそうです」
深澤「はーい、ありがとうございます。ちょっとここ離れますね」
白衣を脱いで、病棟を後にする。
エレベーターに乗って一階まで降り、受付に向かうと、お姉さんが2人は中庭にいることを教えてくれた。
そのまま中庭に向かうと、ベンチに座る佐久間と、学校から借りてきたのであろう車椅子に座り、俯いている阿部ちゃんが目に入った。
佐久間は俺に気づいたのか、手を振ってくる。
小走りで近寄ると、佐久間が阿部ちゃんに声をかけた。
佐久間「阿部ちゃん、ふっか先生来たよ」
とんとん、と優しく佐久間が肩を叩く。
俺は阿部ちゃんの前に屈んで、様子を見る。
ゆっくりと顔を上げた阿部ちゃんは、やはりかなり調子が悪そうだった。
深澤「阿部ちゃん、おはよう。お待たせ」
佐久間「じゃあ、俺ちょっともう出なきゃだから。寮に戻すようだったら連絡ちょうだい。俺迎えに来るよ〜」
深澤「おう、あんがと」
佐久間「じゃあまたね、阿部ちゃん。また来るからね」
佐久間は優しく阿部ちゃんの手を握ったあと、小走りで駐車場の方へ向かっていった。
その姿を、見えなくなるまで目で追っていた阿部ちゃん。
とんとん、と膝を叩いて、意識がこっちに戻ってきたのを確認。
深澤「阿部ちゃん、お話できそう？」
阿部「… ん」
小さく、でも確かに返事をした。
深澤「ここでお話しするか、おへや行くか、どっちにしよっか。先生は、ここ暑いからお部屋がいいと思うな」
阿部「…お、へや…いく」
深澤「ん、わかった。ここ、おてて捕まっててね。車椅子動かすよ」
阿部ちゃんの手を手すりに掛けさせ、俺は後ろに回る。
そしてゆっくりと車椅子を押して、エレベーターに向かった。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
