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佐久間side
普段は月水しか来ない学校なんだけど、今日は他の学校が午後からの出勤だったから、朝、顔を出しにきた。
それは、心配な子が1人いたから。
阿部亮平くん。阿部ちゃん。
高校に通い始めの時から、ふっかと話し合って、阿部ちゃんには毎日自分についての記録をメールで送ってもらっている。
調子が悪くても書けるように、ほとんどはチェック項目式になっていて、最後にフリースペースを設けた簡単なもの。
調子が良ければフリースペースには、「寮に住み着いてる猫と仲良くなったよ」とか、「夕食がカレーで嬉しかった」とか書いてあるんだけど、調子が悪いと項目すら埋まってなくて、って時もある。
それでも毎日送ってくれていたんだけど、昨日は高校に入って初めての、連絡なし。
心配になって、メールをしてみたけど、何も返事がない。
疲れて寝落ちしたとかならいいんだけど、なんとなく胸騒ぎがして、今日は寄っていくことにした。
その勘は正解だったみたい。
カウンセリングルームの隣の隣。
もはや、阿部ちゃんのための部屋、みたいな。
その部屋の前に、見慣れない、ガタイのいい男の子。
話を聞いて、待ってるように伝え、阿部ちゃんの様子を見にいく。
コンコン、とノックをして、そっと扉を開けると、壁に向かって椅子に座り、頭をぐりぐり押し付けている阿部ちゃんの姿。
そっと近づいて、阿部ちゃんの視界に入る位置に行って、下から見上げるようなかたちでかがむ。
阿部ちゃんが俺を認識したのを確認してから、そっと頭を壁から離した。
阿部「…ぅう〜」
佐久間「あたま、痛かったね」
何か伝えたいことがあるのか、静かに唸る阿部ちゃん。
気持ちが不安定になると、自傷行為をしてしまったり、言葉がうまく出てこなくなる。無意識な行動も出てくると、危ないサイン。
今回は、多分明確な原因があるというよりは、じわじわ調子が狂っていった感じかな…
佐久間「大丈夫、さっくんが来たからね。午後はふっかのところ、行こうね」
阿部「…ひか、る」
佐久間「岩本照くん？」
突然名前が上がった岩本くん。
阿部ちゃんは、たぶん起きた時のことを気にしているのだろう。
阿部「んん〜〜〜〜」
ぼろぼろと泣き出してしまう。そして、自分の髪の毛を強く掴んだ。
佐久間「阿部ちゃん、髪の毛からおてて離すよ〜」
落ち着かせるように、背中を摩りながら声をかける。
でも、今日の阿部ちゃんは一筋縄では行かなかった。
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作者名：みお | 作成日時：2023年2月10日 6時
