Snow Dome（雑多短編集） (ページ15)

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あんしんのいろページ15

深澤辰哉(30):精神科医。中学生の頃からの阿部の主治医。佐久間とは中高の同級生。

佐久間大介(30):スクールカウンセラー。毎週月曜日と水曜日、寮の一角にあるカウンセリングルームにいる。出回って積極的に生徒に絡みに行くタイプ。

岩本照(17):全寮制の高校2年生。部活は無所属だが筋トレが趣味。阿部と同室。

阿部亮平(16):全寮制の高校2年生。生徒会副会長。岩本と同室。

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佐久間side

とある高校の、カウンセリングルーム。

部活がある生徒はまだ帰寮してないこの時間。

俺は椅子に座って、とある光景を見ている。

机の上にはたくさんの画用紙。

ほとんどの画用紙は真っ赤に染まっていた。

阿部「ん〜…ぅ」

赤いクレヨンを握って、ひたすらにぐるぐると手を動かす男の子。

阿部亮平くん。この高校の、生徒会副会長。

成績も優秀で、1年生の時には修了式で成績優秀者として表彰され、2年生になっても前期の成績はトップをキープしている。

そんな阿部ちゃんの、みんなの知らない、一面。

阿部「っは…」

ぎゅーっと、右手はクレヨンを握って、左手は自分の髪の毛を掴んで引っ張っている。

佐久間「阿部ちゃん、髪の毛痛くない？」

阿部「ん〜〜〜〜〜〜っ」

佐久間「ごめんね、ちょっと触るよ」

無駄かもしれないけど、一声かけて、阿部ちゃんの左腕を掴む。

下から手のひらに沿わせるように、阿部ちゃんの髪と手の隙間に自分の手を滑り込ませ、指を絡める。

阿部ちゃん自身の髪の毛からは手が離れたけど、代わりに強く握られる俺の手。

それでも、阿部ちゃんが自分の髪を引くよりはマシだと思った。

今日は落ち着くのに時間がかかりそうだな。

右手で握られたクレヨンは新品だったはずなのに、もうそろそろ半分の長さに到達しそうで。

阿部ちゃんの左手と、俺の右手はもう真っ赤。俺もある程度力を入れて握らないと、痛みに負けそう。

空いている左手で、阿部ちゃんの頭を撫でる。

落ち着いて、大丈夫だよって、思いを込めながら。

それからさらに数十分。

疲れたのか、力尽きたのか、落ち着いてきたのか。

だんだんとクレヨンの動きが鈍くなり、握られた手の力も弱まってきた。

佐久間「阿部ちゃん、少し眠れそうかな」

何も返答はない。

阿部ちゃんの右手からクレヨンを抜き取ると、右手の力はくたっと抜けた。