【文豪ストレイドッグス】偽るしかなかった。 (ページ10)

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第九話ページ10

柔めのシャワーは嫌いだ。細かい水滴への感覚まで研ぎ澄まされてしまうから。
一粒一粒が肩に、胸に、腹に当たる。それがするすると肌の上を舐めていく。
そんなことを考えていると、自然と背筋が反り返ってしまう。
「どうしたの?」
私のシャワーを持つ手を包み込まれた。
何でもないと短く返すと、シャワーを止められ長いキスをされた。
キスをするのは好きだけれど、唇を離す瞬間は切なかった。名残惜しむ下唇を甘咬みされるだけで、胸が一杯になる。

太宰さんは丁寧に私の身体を洗いあげていた。
頭皮を解され、指を髪に通された時にはもう、私は骨抜きだった。
甘い二人の吐息は絡み合いのぼせ上がっていく。

細い人差し指で背骨の一つ一つの窪みと尾てい骨の微かな膨らみを確かめられ、鎖骨には歯が食い込む。
あ、この人は女を知っている人だと、再確認した。

朝の夢を見た。
ゆりかごの中にでも放り込まれたのか、ゆったりとした振動が私に伝わってくる。
「起きたのか」

私が顔を埋めていたのは、硝煙の薫り漂う赤髪。
負ぶさっていた。織田作さんに。

目は開くのに舌が動こうとしない。
「余りにも酔いが酷かったからな。太宰の所まで届ければいいか?」
「め、なさ」

ごめんなさい、と声に出したつもりの音に、織田作さんは何も言わないでまた笑っていた。