【文豪ストレイドッグス】理想の箱。

第八話 ページ10

寝るときはこれ、と渡された浴衣にYシャツとスカートがそれぞれ数枚。替えの下着やらなんやらを大きめのリュックサックに詰め、地図の通り国木田さんの住まいへと向かっている。

国木田さんはまだ仕事が残っていたらしく、私に食事代等を手渡すとまたパソコンへ向かった。

思いの外、重いリュックサックに肩を痛めながら、休み休み道を歩いていた。

いつの間にか日が傾きはじめている。とにかくこの横浜はすこぶる治安が悪いらしいから、日が完全に落ちる前には着けるようにと言われたが、

「ここどこ？」

見慣れぬ土地を歩けば、必然的にこうなってしまう。

そう、迷子になった。

ダサくはない。色々あったばかりで疲れ果てている私に追い討ちをかけた国木田さんが悪い。

これまでどれくらい歩いたかしらと後ろを振り返ると、
これがまたヒドイことに、
こんな道通ってない。 と本気で思った。
現にここにいるのだからそんなことはないはずなのだけれど、記憶にない。

後にはただ暗い、冷たい道が続いていた。路地裏であった。もちろん前も同様で、光なんて一筋もさしていなかった。

私は見知らぬ世界へ迷い込む天才だな。

そうやって自らに起こった悲劇を、いかにも喜劇的に笑い飛ばし、来た道(らしき物)を引き返そうとした所で、私はやっと、

近くで息を潜めていたもう一人の存在に気付いた。

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